取材・文/ふじのあやこ

写真はイメージです

離婚、再婚などで複雑化する家族関係。血縁のない家族(義家族)との関係で生じる問題、そして新たに生まれたものを、当人にインタビューして、当時感じた素直な気持ちを掘り下げていく。【~その1~はコチラ

今回お話を伺った寛子さん(仮名・43歳)は33歳のときに8年間の交際期間を経て2歳上の男性と結婚。お互い親とは希薄な関係が続いており、結婚願望はなかったが、結婚したいという気持ちに自然となったと振り返る。

「無関心な親に育てられたことを、ずっと『過干渉よりはマシ』と無理やり思い込もうとしていました。それは間違いで、寂しかった気持ちを素直に吐き出していいと教えてくれたのが、夫です。他にも、お互いに友人が多いのに、本音で話せる人が少ないことなど、夫とは共通点が多くありました。

そして、私たちは結婚よりも子どもを持つことへの不安も一緒でした。でも、授かったときは2人で大喜びしたんです」

声を荒げる姿は、恐怖でしかなかった

妊娠初期から寛子さんは悪阻や妊娠性湿疹に悩まされる。体調不良から会社に行くことができず、当初は産休を取得するつもりだったが、退職を選択した。

「体調はその日でガラリと変わるので、急に休むことも多くなってしまって。産休に向けて調整しないといけない時期から会社に行くことができなくなったんです。そんなことを繰り返していると会社に申し訳なくて、夫と相談して退職することにしました。『落ち着いたら戻っておいで』と言ってくれる方もいましたが、迷惑そうな態度を隠さない人もいて……。誰でもできるような事務の仕事だったけれど、新卒で採用されてからずっと勤めていた場所だったので、なんか自分の一部がなくなったような感覚がありました」

終日家で安静に過ごすようになったものの、体調は数時間ごとに変化して家事もままならない状態。夫は「ゆっくりでいい」とは言ってくれるが手伝ってはくれなかったという。

「夫なりの優しさなんでしょうけど、イライラしましたね。自分のことは自分でしてくれるけれど、私のことはしてくれない。『俺のことは放っておいていい』と言いながら、シンクにたまっていく食器を見たら、おかしくなりそうでした」

寛子さんにモラハラはいつ始まったのかを聞くと、「飲み会に行くと報告を受けたとき」と答えた。

「私はご飯もあまり食べられない状態なのに、夫は普通に『今日は飲み会だから遅くなる』と言ってきました。そこでイライラが爆発して、心配しろとか、行くなとか泣きながらに叫んだと思います。興奮していたから覚えていなくて……。

そんな私を見て、夫は『俺が仕事しているから家で寝てられるんだろう! 今は寝るしかできないくせに』と怒鳴ってきました。そのときにコップをシンクに投げ捨てられたんです。恐怖で心臓がキュッとなりました……」

【恐怖で支配され、何も言えない 次ページに続きます】

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