「これからは社会のために働く」と宣言
退院して自宅に帰ると、父はみるみる元気になったと言います。
「そして、社会のために働くと宣言し、環境問題などに取り組み始めたのです。会社はずっと黒字を続けており、後継者もいて盤石でした。しかし、父が社会貢献活動にはまり込んでから、会社の雲行きが怪しくなったんです」
多少のお金ではビクともしないが、自社の事業以外のことに代表が熱中してしまうと、従業員のやる気がなくなってしまいます。
「だから、優秀な社員から辞めていくような事態が起こりました。父はそれまで無表情ともいえるほど、感情を表に出さなかったのですが、コロナ復帰してから徐々に喜怒哀楽をハッキリ表現するようになったのです」
特に怒りをすぐに出すようになったそうです。自分の欲求が通らないと机をたたくなどするように。
「あまりにもおかしいので、お医者さんに診てもらったら、特に変化はありませんでした。ただ、心療内科の先生が、“今まで頑張って来た人が、コロナで死を意識し、本来の自分を取り戻そうとする行動はよくある”と言っていたのです。父はまさにそれだと思いました。後継者とされている社員も困り果て、母と私に相談することが増えました」
そのときに、ある社員が「申し上げにくいのですが、社長には女性がいるようです」と打ち明けた。
「父は堅物なので、女性問題はないだろうと思っていたのですが、社会貢献活動に取り組むうちに、ある50代の女性と知り合ったらしいのです。父は最近、視察だといって、全国各地に行っているのですが、どうも怪しい。母が行き先を聞くと、“俺を監視する気なのか”と怒鳴る」
あるとき、美波さんが「お父さん、どうしてしまったの?」と聞くと、「俺はコロナで死にかけた。これからは好きに生きる」と宣言されてしまったそうです。
「母が兄に相談したところ、“オヤジはもともと女性が好きなんだけど、隠していたんだよ。気になるなら、探偵さんにお願いして、証拠を押さえればいい”と言われたそうなんです」
そこで、美波さんが私たちのところに来られました。
「私と兄が恐れているのは、その女性に騙されること。父はコロナで死を意識した後、従来の鎧がとれたのか、なんでもすぐ信じるようになり、優しい人、ちやほやする人の言いなりになっていると感じます。もともと真面目な人なので、証拠を押さえていただきたい。ショック療法的ではありますが、今の父に己の姿を見せてやりたいんです」
この父親が置かれた状況は、なんとなくわかります。今、家族や従業員をはじめ、周囲の全員が厳しく接している。しかし、その女性だけは優しくしてくれる。その結果、特別な女性になってしまったのでしょう。
「財産の問題もあります。事実を把握し、できることを考えたいのです。どうぞよろしくお願いします」
【父の体を気遣い、かいがいしく働く女性……その2に続きます】
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/