良かれと思ってしたことはすべて迷惑だった
毎月の家族(両親・兄一家・碧さん)の集まりに夫を誘い、夫も参加し続けたという。碧さん家族と夫の仲は深まっていくも、碧さんと義家族は一向に進展がないまま。夫に伝えても「大丈夫だから」と言われていたが、碧さんは夫に内緒で義両親を家に招待する。このことが夫の不満を爆発させるきっかけとなってしまったという。
「夫はあまり自分のことを多く語らないので、本当に喜んでもらいたいと思ってしたことでした。夫は義両親と折り合いが良くなかったんだと思います。義両親を家に招待して、滞在しているときは普通の態度でしたが、帰られた後に『本当に迷惑。何もかも迷惑』と怒鳴られたんです。
そこから、吐き捨てるように『お前の家族はウザい。平日仕事で疲れて、土日に義両親に気を遣って、どこでリラックスすればいいんだよ』と。そこから夫との会話はなくなりました」
その後すぐにコロナ禍に入ってしまい、どちらの親とも交流は一旦停止することに。お互いリモートワークになったことで家での生活は苦痛でしかなかったと振り返る。そして同じ思いを抱えていた夫は家を出て行った。
「コロナ禍に入って、ずっとお互い家にいるのに、同じ空間にならないように気を遣って、気配を消して……。ご飯をもしかしたら食べるかなって思って多く作っても、翌日にそのまま放置されているのを見てショックを受けたり。あのときはまだよくわからないウイルスにもピリピリしていて、もう限界でしたね。そんな家の空気を読んで、夫は離婚届けを置いて、出て行きました。
その離婚届ですが、まだ出せていません。両親にも夫と同居していることになっています」
碧さんは夫側の記載済みの離婚届けを1年以上持ったままだという。そのことについて夫から催促もなく、2人は法律上では婚姻関係が続いている。
家族については、「結婚は新しい家族を作るもの」という考えと、「結婚は家族を増やすもの」という考えがある。どちらが正しいと思うのかはそれぞれの価値観に寄るだろう。碧さん夫婦は、夫は前者であり、碧さんは後者だった。結婚のときに2人のルールを作ることも多いが、家族に対する価値観を確かめ合う夫婦は意外に少ないのが現状だ。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。