バブルの定番のジュエリーに女性は……
2人の会話の内容を察するに、女性と夫が会うのは2回目。夫は女性に欲望を感じており、女性は夫からお金を引き出したい様子でした。
女性の服は、色白を演出する清楚系のメイクに黒髪、胸を強調するような花柄のワンピースと明らかに“パパ活”女子です。パパ活女子とは、男性と疑似恋愛をして、お金を受け取る女性を指します。専用のマッチングアプリもありますが、一般のアプリにもパパを探している女性は多くいます。
夫はそんな女性の意図を知ってか知らずか、「お金をあげたら、愛が嘘になってしまう。私の君への愛は本物だよ」と言いつつ、バッグから海外のジュエリーブランドの箱を取り出します。女性は「現金のほうがいいのに」という表情を一瞬だけして、「ありがとうございます」と受け取っていました。
中に入っていたのはネックレスで、バブル時代の男性が好んで選ぶ定番のデザイン。しかもシルバーだったので、明らかにがっかりしていることが伝わってきます。
早々に解散し、女性はモノレールで帰宅。夫はソファに座って、スマホをいじっています。それは、遊びの人が目的のマッチングアプリ。女性となかなかマッチせず、1時間程度も画面を眺めていました。その後、会社に戻り、上階にあるアパートの一室に入っていきます。30分ほどすると、プロの女性がやってきて、1時間程度過ごして帰っていきました。
おそらく、夫は持て余した性欲を、プロの女性で処理したのでしょう。
以上の顛末を依頼者・美佳さんに伝えたところ、「これは離婚はありませんね。ホッとしました。でも、別のマッチングアプリもやっているんですね。ホントに腹が立ちます」と言っていました。また、美佳さんは夫婦生活が苦手で、「プロなら目をつぶります」と付け加えたのです。
探偵という仕事をしていると、人の幸・不幸の価値観が見える場面に立ち会うことが多々あります。美佳さんは家とお金を必要としており、夫は自分の面倒を見てくれる年下の家政婦さんが欲しかったことが調査を通じてわかりました。相互に理解したり、歩み寄ったりする気持ちが少ない結婚生活が、これからどうなるのか、私にはわかりません。
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マッチングアプリという最新のツールは、かつての結婚の主軸だった「お見合い」を思わせる。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向調査」(2016年)にあったデータを参考にすると、かつて主流だったお見合い結婚より恋愛結婚が多くなったのは、1965年頃だとわかる。世の中が上向きの時代だったからこそ、人々も恋愛に前向きになったとも考えられる。
それから60年近くの歳月を経て、経済も未来も不安が付きまとうようになったころに、マッチングアプリが登場。それと同時に、社会は先行きが見えなくなっていき、結婚には愛よりも条件が重視されるようになっていく。自由な恋愛よりも、条件のお見合いへ……時代は再び戻っていくのではないだろうか。
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/