頼りになる親は、いつまでもいない
現在の娘は、ドラッグストアでアルバイトをしている。
「コロナの前までは、ホテルのベッドメイキングのアルバイトをしていたんだけれど、人員整理でクビになって、いまはドラッグストアでアルバイトをしています。娘が定職につかなくなってから、約8年間、月収は10万円を超えたことはない」
娘は実家に住んでおり、衣食住には困らない。家事全般は妻が行っており、娘はほとんど何も手伝わない。
「光熱費も食費も家に入れないのに、朝昼夜としっかり食べている。国民健康保険、国民年金はずっと私が払っている。私も元気だけれど、70歳。『親はいつまでもいない。将来をなんとか考えろ』と言ったら、『アニキと話したら、“実家はお前にあげる”と言ってくれた。住む場所には困らないので安心している』と言った」
建物には固定資産税がかかるし、光熱費も修繕費も必要。それでも何とかなると思っている。それにもかかわらず、雄一さんは娘に、月5万円の小遣いを渡しているという。
「生活費じゃなくて、”オタ活費”。声優って言うの? アニメにハマって、箱推しとか、カップリングとか、言いながら、妻と盛り上がっている。妻も娘と同じ作品にハマって、楽しそうにしているから、まあ、いいかと」
娘に結婚する気は、全くない。
「おそらく、ずっと恋愛をしていないと思う。ずっと家にいるからね。私たちが元気なうちに、何らかの用意をしてやりたいけれど、それもできない。上の世代に比べて退職金も少なかったし、団塊世代というのは少々割を喰っている。でも娘たち世代よりはマシだと思うから、まとまったものを残してやりたい。今でも仕事をしているのは、親心だよね」
Writer&Editor 沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。