文/鈴木拓也

「片づけ」といえば、多くの方は、老いた親が住む「実家の片づけ」を連想するだろう。
それはそれで大切なことだが、その子世代である50代もまた、身の回りの片づけの「適齢期」だという。

そう説くのは、阿部静子さん。整理収納アドバイザーとして5年間で6千人以上の受講生に片づけのアドバイスをしてきた、その道のプロだ。

阿部さんの講座を受講する人たちは、20代から80代と幅広いが、60代以降の人も少なくない。その世代の受講生は、戸建てからマンションに引っ越したり、配偶者を失ってひとり暮らしになったりなど、「突然片づけを突きつけられて、急いでものを減らさなくてはいけない環境」に直面していた。彼らが、大変な思いをしているのを見て、その手前の50代の片づけの重要性を実感したという。

先般、その思いをもとに阿部さんは、著書『だから、50歳から片づける 「思い出のもの」は捨てなくていい』(CCCメディアハウス)を上梓。人生の折り返し地点を過ぎ、何かと節目にある世代に、片づけの秘訣を教える。

キッチンは箸・カトラリーから着手

本書で取り上げる片づけの範囲は、玄関にはじまり、クローゼット、キッチン、押入れなど幅広い。言い換えれば、家の中のほぼすべてについて、この年代にあった片づけのノウハウが盛りこまれている。

例えばキッチン。様々なものがあって、片づけのハードルが高そうな場所だ。

キッチンについて阿部さんは、5つのエリアに分けて、1エリアずつ対処していくことをすすめる。5つのエリアとは、「箸・カトラリーの引き出し」「食品ストック」「調理道具」「鍋・フライパン」「食器」をさす。

最初は一番片づけやすい「箸・カトラリー」の引き出しから。全部出して、コンビニなどでもらった割り箸やスプーンを捨てるのが第一歩。ついで、「先が傷んだ箸、錆びたスプーン」も手放し、傷みやすい「木製のスプーン」もチェックする。手元に残しておくべきカトラリーの本数は、家族の人数とイコールにしておくのが基本。子供が巣立っていくと、必然的に多くのカトラリーが残ることになる。これを、残った夫婦が使って、持て余さないくらいまで減らすわけだ。

皿やグラスなどの食器も同様。ベースは家族の人数分とし、帰省してくる子や孫、それに来客の分を勘案して、若干多めに確保しておけばよい。中には、手放すには惜しい食器もあるかもしれない。子に譲るという考えが閃くかもしれないが、阿部さんによれば、たいてい「いらない」と言われるそうだ。

押入れは「箱」から片づける

押入れは、半世紀の間にためた、いろいろなものをしまっているから、早く手をつけたい気持ちになる。

だがここは、「片づけ力」がついた最後に行うエリアだという。

ポイントは「厳選して残す」。大概の家庭では、空箱がたくさん押し込まれているので、まずはこれから。
「箱って、とっておいた方がいいんでしょうか?」は、よくいただくご質問です。
「でも全然使ってないんですよね……」とおっしゃいます。もう答えは出ていますね。基本的に箱は、とっておかないようにします。
家電の箱、鍋が入っていた箱、バッグが入っていた箱、靴が入っていた箱、ゲーム機の箱、インテリアグッズが入っていた箱。着物の空箱が大量に出てきたこともありました。
いろいろありますが、どれもかさばります。
「箱は処分する!」と決めればあまり迷わずできますので、はじめに取りかかりましょう。(本書より)

阿部さんは、片づけサポートで訪ねた家で、押入れの前に、ものが山積みになっているのを、何軒も見てきたという。押し入れの箱を取り除くだけで、そうしたものをしまう余地ができる。ごくたまに使うものが箱に入っている場合は、それを箱から取り出して、大きな透明袋に入れて保管する。箱ほど場所を取らないで済む、というメリットがある。

思い出が伴う品物については、どうすべきだろうか? 例えば結婚式の引き出物や自身の写真アルバムは、ごみのように処分するにはためらいがある。

阿部さんは、引き出物の食器が使われずにしまい込まれているのを、しばしは見かけるという。使っていない理由を聞くと、「あまり好みでなくて」と答えが返ってくる。

阿部さん自身は、そういうものについては、2か月自宅に置き、「気持ちをいただいた」あと、手放すようにしているそうだ。

フリマアプリやリサイクルショップを利用して、人に譲るのも手だ。なんとなく気後れするのであれば、「“ものは使われて、はじめて輝く”と思ってください」と、阿部さんはアドバイスする。たしかに、押入れに死蔵されたままより、欲しいという人に使ってもらった方がずっといい。

自分の片づけに集中すると家族が変わる

自分は片づける習慣が身についていても、配偶者や子はそうでないパターンは、よくあるようだ。

阿部さんは、自身の夫の例を挙げる。夫の所有する衣類は、ウォークインクローゼットの棚に収まりきらず、床に積み上がるほどあったという。阿部さんが代わりに片づけたり、夫に声がけしても、それで片づけてくれるという気配はなかった。

そこで阿部さんは、自分のものの片づけに集中することに方向転換した。すると、夫の衣類があまり気にならなくなり、驚いたことに、夫が自分の服を片づけるようになったそうだ。

受講生からも、自分の片づけに集中することで、家族も片づけるようになったという報告は、多いという。この場合のポイントとして、相手をほめるのが重要。阿部さんは夫に、「片づけられたなんてすごいね」とちょっと大げさにほめたところ、夫は定期的に片づけるようになったとか。

では、シニアの親が住む実家の片づけは、どう考えるべきだろうか?

親に向かって、「こんなの、いらないでしょう?」などと、自分目線で片づけを促してしまうのはNGだ。阿部さんは次のようにアドバイスする。

親御さんには頭ごなしに「捨てたら」というのではなく、「ものが多いとけがの原因になるから片づけよう」「使いやすい家にしよう」と話してください。心配していることが伝われば親御さんもうれしいはずですし、片づける気になるかもしれません。
そして、「無理に捨てなくてもいいよ」と寄り添う気持ちを伝えます。親御さんも、きっと気持ちをラクにして片づけに取りかかれます。何十年も溜めてきたたくさんのものですから、捨てるのはそう簡単ではないのです。(本書より)

実家は、あくまでも親の家。このように話しても、結果として少し片づけばいいくらいで考えておくのが、両者にとってベストというわけだ。

* * *

本書の締めくくりで、阿部さんは、完璧な片づけを目標にする必要はないと記す。目指すはあくまでも心地いい暮らしにすること。まずは「1日5分」、目の前の細かいところからはじめてみるとよいだろう。

【今日の暮らしに役立つ1冊】
『だから、50歳から片づける』

阿部静子著
CCCメディアハウス

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

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