ディスカウントストアで、コスプレ用コスチュームを購入
妻を迎えに来たのは、30代前半と思しき男性。表情にあどけなさと幼さが残り、「若者」といってもいいような雰囲気です。妻とはかなりの年の差があります。
男性とは20メートルくらい離れて目で合図し、男性が歩き始めたら50メートルくらい後を妻が歩く。夫・正雄さんは何度も妻の素行調査を依頼していることが妻の様子から伝わってきます。別の探偵の尾行を妻が巻いたことがあるので、私たちに依頼したのだろうと思いました。
妻は何度も後ろを振り返り、誰もいないことを確認。駅から200メートルほど離れた駐車場に向かいます。私たちは望遠レンズで男性を追い、車種と車体の色を確認。車が出るのを待つことにしました。駐車場が15分単位で課金されるので、おそらく15~30分後に出てくるでしょう。尾行が追っていないか、周囲に誰かいないかを、この間に見極めるのです。
そして、車が出てきたのは36分後。10キロほど離れた国道沿いのディスカウントストアに手をつないで入店し、お酒やラブグッズなどを購入。男性が妻に警官のコスプレ衣裳を「超似合うと思う。着てほしい」などといって購入。3万円近い代金は、男性が支払っていました。
妻は終始甘えるようなふるまいをしており、2人が恋人同士なのはよくわかります。妻の実年齢は59歳なのに、帽子をかぶっているからでしょうか、どう見ても30代後半に見える。ただふと見た手のしわに年齢がくっきりと刻まれていました。
2人は男性の自宅と思しきおしゃれな一戸建てに入って行き、再び夜に外出。すっかり警戒が解けている妻は、後ろを振り返ることもせず、近くのイタリアンレストランに入って行きます。ここの会話からわかったことは、男性は不動産会社に勤務しており、妻は夫・正雄さんと別居するためのマンション購入を検討した1年前にこの男性と出会ったこと。
男性の休みが水曜日なので、妻はそれに合わせている。男性は妻との結婚を望んでおり、「もっとずっと一緒に過ごしたい」と言っていました。妻の仕草は愛らしく、優しく、20歳以上の年の差など関係なく、これはメロメロになってしまうと思いました。
その翌日、妻は朝5時に出て来て清掃のバイトに行き、昼は食堂でランチをさばき、夕方からは学童で子供たちの世話をし、夜はお寿司屋さんではなく、スナックに出勤してから深夜12時に男性の家に帰ってきました。
報告の日、正雄さんは「やはり……」と言い、落ち着いている様子でしたが、妻が笑顔で男性と買い物する映像を見ると呻くように泣き出しました。しゃくりあげながら「もう見たくありません」と再生をストップ。
「もう、僕は限界です。こんな状態で生活することはできない」と妻と離婚をすることにしたそうです。
しかし、正雄さんはそれを切り出すことが出来ない。妻は相変わらず、ランニングから家に帰ってきて、家事をこなし、そして、また男性の家に戻っていく。妻も妻で、男性を頼りないと思っているのでしょう。
妻は時々自宅に泊まることもあり、正雄さんはそのたびに安心するのだそう。このように、夫婦の心が離れてどちらかが浮気をしていても、離婚しないまま婚姻生活を続ける人は少なくありません。不安な時代ですから「いざというときに助け合う人」は確保しておいたほうがいいという、打算もあるでしょう。でも、それ以上に長年過ごした夫婦のつながりは、恋心よりも強固なのだと感じるのです。
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/