101歳のいまも活躍する現役の日本最高齢ピアニスト、室井摩耶子さん。自分らしく、幸せに生きるコツは、「わたしという『個』、わたしの『心とからだ』の声に従ってきたから」だと言います。そんなマヤコさんの生きる指針をご紹介します。「人生100年時代」と言われるいま、将来の暮らしに漠然とした不安を持っている方のヒントになるはずです。

文/室井摩耶子

よく寝て、よく動く

寝る子は育つ。昔からよく言われていることです。医者の先生に聞きますと、「子どもの成長はもっぱら夜中に進む」のだそうです。本当に寝ている間に成長しているのですね。

わたしも、100歳を過ぎても成長し続けているようです。だって、寝てばかりいるんですから!

むしろ覚醒しているにはどうしたらいいかしら、と思うほどで、「これをやらなくちゃいけない!」ということがあったとしても、からだが突然、「マヤコ、眠いほうが先でしょ?」と言い出したら、さあたいへん。「何を言っているの、わたしは起きています」と、そのたびに必死に抵抗を企てるのですが、残念なことに、たいてい負けてしまいます。負けたらベッドへ一直線。毎晩、気持ちのいい睡眠が待っています。わたしの大好きな時間です。

お昼寝は大切な時間

このような勝手気ままな睡眠が、疲れをためないためには大切です。規則正しく、決まった時間に起きて、決まった時間に寝る。誰もがこう勧めますが、わたしの「体調リベラリズム」は、そういうわけにいきません。決めるのはわたしではなく、「からだ」です。

起きていようと思っても、からだが、「ノー! ノー!」と勝手に声をあげ始めたら、起きていられません。その代わり、ピアノを弾いているときに、心もからだも乗っていれば、零時を回っても、鍵盤を叩いていることがあります。弾きたいときに弾く。これもわたしのやり方です。

朝も、からだが思うままに任せます。目覚ましをかけずに、起きたいときに起きる。たいていは、窓から差し込む朝日の爽やかな光で目を覚まします。

昼ですか? 昼はお昼寝の楽しみがあるじゃないですか。ヨーロッパでは、「シエスタ」といって、昼過ぎから夕方まで、休みを取る習慣があります。この時間帯の街は、ひっそりと静まります。

いまではどうかわかりませんが、40年以上前、わたしが暮らしていたドイツのベルリンの街は、本当に通りを歩く人が減るのです。こんなときに無粋にピアノを鳴らして、シエスタの邪魔をするわけにはいきませんので、わたしも手を休めます。ついでにからだも。これがすっかり習慣となって、いまではお昼寝が大切な時間になりました。

昼も寝て、夜も寝て……やっぱり好き勝手に寝てばかりですね。いいんですよ、それこそが「体調リベラリズム」なんですから!

* * *

『マヤコ一〇一歳 元気な心とからだを保つコツ』(室井摩耶子 著)
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室井摩耶子(むろい・まやこ)
大正10年4月18日、東京生まれ。6歳でピアノを始める。東京音楽学校(現・東京藝術大学)を首席で卒業後、同校 研究科を修了。昭和20年1月に日本交響楽団(NHK交 響楽団の前身)演奏会でソリストとしてデビュー。昭和30年、映画『ここに泉あり』にピアニスト役(実名)で出演。昭和31年にモーツァルト「生誕200年記念祭」に日本代表としてウィーン(オーストリア)へ派遣され、同年、第1回ド イツ政府給費留学生としてベルリン音楽大学(ドイツ)に留学。以後、海外を拠点に13カ国でリサイタルを開催、ドイツで「世界150人のピアニスト」に選ばれる。59歳のとき、演奏拠点を日本に移す。CDに『ハイドンは面白い!』など。平成24年、新日鉄音楽賞特別賞を受賞。平成30年度文化庁長官表彰。令和3年、名誉都民に選定される。101歳のいまも活躍する現役の日本最高齢ピアニスト。

 

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