立ちっぱなしでパックに総菜を詰め続ける

スーパーの総菜作りの仕事はハードだった。仕事は9時から13時か、13時から17時まで。いずれも総菜が売れる時間帯に「出来立て」を提供し、売り切ることがミッションだ。

由美さんが任されたのは、工場で調理されたサラダなどの総菜を、パックに詰め値札シールを貼ること。

「サラダやお寿司は痛むといけないので、室温が低いんです。寒いし立ちっぱなしだし、慣れるまでが大変でした。家事ならある程度仕事をしたら、自分のペースで一休みができますが、ここではトイレさえいけない。膝ががくがくしてもパックに総菜を入れ続けるんです。初日、肩はバキバキになり、腰は重くなり、ふくらはぎはパンパンに腫れました」

そんなとき、由美さんを助けてくれたのが、素子さんだ。

「素子さんはベテランのパートでした。声が大きく明るい人で、“この人いい人だな”と。新人の私にも目をかけてくれて、“お腹に力を入れて立つと、疲れにくいよ”などと立ち方のコツを教えてくれたり、サボり方というか“手の抜き方”のようなものを教えてくれたんです」

由美さんは最初は失敗ばかり繰り返していた。それを素子さんがフォローしてくれた。失敗を繰り返すたびに、仕事はできるようになる。パート仲間もでき、LINEグループにも入れてもらった。

「慣れれば仕事って楽しくなるんですね。私はたぶん、この仕事に向いていたのか勤務2か月で店長からほめられるようになりました。もともと手先が器用で、ずっと料理をしていたから、お寿司や揚げ物なども任されるように」

充実していても、4時間立ちっぱなしの仕事だ。くたくたに疲れて帰ると、夫が食事の催促をする。

「午前のシフトに入ると、朝と昼が作り置きになる。それだと主人が不機嫌になるので、なるべく午後に入るようにしていたんです。家に17時30分に帰ってから主人のご飯をつくるのが疲れてできないこともありました。“他人の飯を作りに行って、俺の飯がおろそかになるなんて”と言われたときはカッとなりましたね」

夫は“仕事”という単語を発すると、「オマエのは、家事の延長。趣味みたいなもんだ。ホントの仕事はそんな甘いもんじゃない」とくってかかる。

「そういう不満を素子さんに話してしまったんですよね。年齢も近いし、聞き上手だし。家庭の暴露話って、相手の足を引っ張る要素にしようと思えばいくらでもできる」

【友人・素子さんが由美さんをじわじわと阻害した原因とは……その2に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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