「コロナ禍、大規模金融緩和により日米欧で刷り散らかされたマネーはおよそ1600兆円。あり余る巨大マネーが投資先を求めて日本に押し寄せ、史上最大の資産バブルとなることが予想されます。そして、この巨大バブルがきっかけとなり、金融グレート・リセットなどの大きな時代の転換期がやってきます。現在はFRBの利上げの影響などで日米ともに株価が落ち込んでいるが、何かのタイミングをきっかけに急上昇する可能性が高い」と説く、不動産コンサルタント・長嶋 修氏の著書『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』から、大きな変化を見せる政治、経済、金融市場の動向についてご紹介します。

文/長嶋 修

定期的に騒動に巻き込まれる大衆

世の中にあふれた多分にバイアスがかかった情報を適切に扱わないと振り回されることに留意していただきたいのです。テレビも新聞も週刊誌も、ネットニュースなども、どうにも扇情的なタイトルやその中身が目立ちます。YouTubeやブログ、noteなど主に個人が情報発信するメディアでもやはり、人の不安を喚起するかユーフォリア(幸福感)を醸成するものになりやすいといった特性があります。例えば「損をする!」または逆に「得をする!」(だから乗り遅れるな!)というように、極端な方向に振れやすいのです。

これは、情報発信者側が「興味を持ってもらい、見てもらってなんぼ」の世界に住んでいるためです。したがってどうしても人間の感情を煽る情報発信が増えやすくなります。そうした情報に触れるたびに、上へ下へと感情を揺さぶられては、たまったものではありません。

とりわけ人は強い不安を感じていると、過剰な購買行動を選択しやすくなることが人間心理の研究からわかっています。1970年代に起きたオイルショックでは原油高騰をきっかけに、当時の中曽根通産大臣がテレビ番組内で「紙の節約」を呼びかけたことから、「紙がなくなるらしい」という噂が広まり、トイレットペーパーに加え洗剤や砂糖・塩・醬油を買占めるような買占め騒動が起きました。

2011年3月11日の東日本大震災の時も同様に、飲料水や缶詰をはじめコンビニ弁当や菓子パン、トイレットペーパーなどのあらゆる生活必需品の買占め騒動が話題となりました。2020年にコロナが蔓延した当初には、各所でやはりマスクやトイレットペーパーが品切れになったのは記憶に新しいところですね。

なぜ一般大衆は定期的に騒動に飲み込まれるのか。

消費を促すマーケティング戦略に欠かせないAISAS(アイサス)というモデルがあります。これは端的に言えば、消費者が商品を認知してから購買に至るまでの行動モデルを、英語表記した際の頭文字をとったマーケティング用語の1つで、大手広告代理店の電通が提唱したものです。

5つの頭文字はそれぞれ、
A:Attention(認知・注意)
I:Interest(興味)
S:Search(検索)
A:Action(購買)
S:Share(情報共有)

このうち最初の「Attention」(認知・注意)では、人々の「安全・安心欲求」を脅かし、恐怖や不安を喚起することが、メディア媒体の販売促進やネット記事のページビュー稼ぎに使われます。私たちはテレビを見てもネットを見ても、常にこうしたマーケティングに気づかぬうちにさらされ、そこでいわばブレインウォッシュ(洗脳)された者同士で他者とオンライン・オフラインでやりとりするため、恐怖や不安が拡大再生産されます。そしてそれが一定のしきい値(境目となる値)を超えると世間の常識となるのです。

前掲した不動産市場の3極化のグラフのベースは、高校の数学で習った正規分布図ですが、これはそのまま社会構造を表していると見てもいいでしょう。いわゆる「世間」と呼ばれるものが、真ん中の約70%にあたるいわゆる「マス層」です。テレビや新聞、ネットなど一般的なメディアによる情報発信は常にこのマス層を対象としています。

理由はかんたんで「広告を得るためには視聴率や発売部数、PV(ページビュー)が必要なので、狙うのは自ずと最大ボリューム層になるから」です。

社会が巡航速度で、比較的安定期にあるときは、このマス層的な価値観に従っていることこそが自身の生活や人生の安定を保証しますが、突発的な事態が起きると、先述した騒動を起こす原因となるなど社会に大きな歪みをもたらしたり、昨今のような大きな時代の転換期には、文字通りこうしたマス層的価値観がことごとく崩壊し、新しい価値観に取って代わられてきました。例えば、明治維新まで刀を差した武士だった人。終戦直前まで日本は勝つと信じていた人。1990年バブル崩壊後に「そのうちまたもとに戻るだろう」と思っていた人などがそれにあたります。

* * *

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長嶋 修(ながしま・おさむ)
1967年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会初代理事長。国交省・経済省の様々な委員を歴任。2019年より始めたチャンネル『長嶋 修の不動産経済の展開を読む』(現在は『長嶋 修の日本と世界を読む』に改題)では不動産だけではなく、国内外の政治、経済、金融、歴史などについても解説。広範な知識と深い洞察に基づいた的確な見立てが注目を集めている。テレビ出演、講演等実績多数。著書に『不動産格差』(日経新聞出版)など多数。

 

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