専業主婦の「離婚デビュー」

純子さんは、いきなり“たった一人”になってしまった。

「さみしかったですね。本当に孤独でした。主人の洗濯や食事の支度などをしなくていいので、時間ができます。主人は荷物を全て運び出してしまったので、家の中がガラガラ。友達に連絡をしても、時間も話も合わない。娘に連絡をしても“嫌味ばっかり言うくせに、グチを聞かせないで”と言われてしまうんです。孫の面倒を見に行っても、娘が主婦として至らない点ばかりが気になって、お婿ちゃんに“ウチの娘は家事ができなくてごめんね”と謝ると、“彼女も僕も働いているんですから、これでいいんです。僕ももっと家事をがんばります”と言われてしまう」

世間から取り残された感覚と孤独を感じた純子さんは、あるママ友に連絡をする。すると「あら、離婚なんていいわね。離婚デビューじゃない」と言い、夏美さん(58歳)が営むスナックに誘ってくれた。そのスナックは、コロナの影響もあり、昼2時から営業している。外は明るいのに、店の中は暗く、まるで夜かのように錯覚をするほどだった。

「夏美さんは元女優で、目がパッチリとしていてキレイなんです。体型はぽっちゃりしていますが、そこにドレスがとても似合っている。スキがないのに、歌だけが下手で、常連のおじ様たちから“ママは歌が下手だな~”とネタにされているほど。なんとも不思議な魅力がある人なんです」

純子さんは62歳まで「まともな人」としか話してこなかったという。彼女が言う“まとも”とは、社会が正しいと認めるレールに乗っている人だ。学校を出て、組織の一員として働き、結婚し、子供を産み、お上の言うことに逆らわずに生きることを指す。

「夏美さんは、中学卒業後に社会に出た人で、話もおもしろくて本当にすごい人だと思ったんです。それから毎日のようにスナックに行くようになり、ボトルも入れました。私はそれまで自分はお酒に弱いと思っていたのですが、強かったみたい。男性からもモテて、40代の男性から“さみしいでしょ。慰めてあげるよ”と言われて、私も女としてイケているんだとびっくりしたんです」

世間の荒波も遊びも経験していなかった元主婦・純子さんが見つけた、自宅の近所の楽園。女王である夏美さんに気に入られるためになんでもするという気持ちになるには、そう時間はかからなかった。

【「あなたと私は、お友達よ。親友よね」という言葉にお金を出してしまう……その2に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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