お互いがお互いを支えているという夫婦関係
元夫は優子さんの良き理解者だった。相手の家族関係が似ていたところがあり、他の友人には言えなかった家族の話をお互いによくしていたという。
「夫の父親はお酒は飲まないにしても、昔ながらの男尊女卑の考えを持ち続けている人で、私が挨拶に行った場でも平気で義母のことを『お前』と呼び、命令していました。夫はそんな父親が大嫌いで、『父親のようになりたくない』と女性は優しくすると小さい頃に誓ったと言っていました。
その一方で夫は優しすぎるところがあるから、父親に威厳を失ってもらいたくないとも言っていて、『母親に対して結局何もできない』と帰省の度に少し辛そうでした。私も、母親に離婚してほしいけどそれを助言することしかできなかった。似ているから、お互いの家族のことを包み隠さずに伝えられていたんだと思います」
夫婦で上京してから優子さんも再び働き出したこと、そしてまだ27歳ということもあり、子どもについて考えたのは32歳になった頃から。しかし1年以上も妊娠することはなく、検査を受けたところ夫側に不妊の原因が見つかる。夫婦で話し合って治療に臨んでいたものの、夫の弱音を聞くことが辛くなり、治療を3年でやめてしまう。
「完全に妊娠する可能性がないわけではなかったので、投薬やホルモン治療などを行い、人工授精から体外受精などほとんどのことを試しました。毎回ダメだったときには、私よりも夫の落ち込みが酷くて、『俺のせいでごめん』とすごく私に謝ってくるんです。
それに治療を行うことによって自然な夫婦生活やスキンシップもなくなりました。私的にはそれも辛くて……。だから治療をやめたんです。『自然に授からなかったら2人で生きていけばいい』と言ったら、夫は『君のそんなかっこいいところが大好き』と言ってくれました」
しかし、二人の関係は、「ごめん」の一言で加害者と被害者ができてしまうということになり……。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。