大威張りの犬おばさんは、お世話になっている上司の妻!?
そしていよいよ、決定的な出来事が起きた。
「ビーグル犬を連れた、いつも大威張りのおばさんがいるんですよ。ひと言で言えば“嫌な感じ”。犬までなんだか威張っていて、小柄な犬を見ると遠くから唸り声を上げる有名な問題犬なんです。吠えながら他の犬に近づいても、そのおばさんは止めようともしない。で、ある日、その犬がりんちゃんをしつこく追いかけて……。あとでりんちゃんを見たら、足から血を流していたんです。怒るのは当たり前でしょう」
顔見知りになった犬友数名に事の顛末を話すと、「あの犬はしつけがなっていない。今度あのビーグルが吠えたり唸ったりしたら、遠慮なく注意しましょう」と全員の意見が一致したそうだ。
ところが、妻から「遠慮なく注意」にストップをかけられたのだ。
「私も腹立たしいけど、ちょっと気をつけて。あの人、Xさんの奥さんだよ。以前、社宅でご一緒したの、忘れちゃった?」
智仁さんは、Xさんと同じ社宅マンションにいたことは覚えているが、奥さんのことまでは覚えていなかった。
「それとこれとは別だろう!?」とは言ったものの、Xさんは現在、智仁さんの事業所の所長。“遠慮なく注意”しづらいのは確かだ。
この犬トラブルをきっかけに、智仁さんは、社宅住まいをしていた頃の妻の苦労話を聞き、自分が知らない社宅時代の気苦労を知ることとなった。
【~その2~に続きます。】
取材・文/大津恭子
出版社勤務を経て、フリーエディター&ライターに。健康・医療に関する記事をメインに、ライフスタイルに関する企画の編集・執筆を多く手がける。著書『オランダ式簡素で豊かな生活の極意』ほか。