取材・文/沢木文
親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970代~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。
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埼玉県越谷市に住む村松里美さん(仮名・75歳)は、先月、娘(42歳)の嫁ぎ先から300万円の慰謝料を請求された。娘は離婚し実家に戻ってきた。離婚の理由は、娘の浮気だ。
【これまでの経緯は~その1~で】
誰もわかってくれず、寂しい結婚生活だった
娘は「専業主婦になりたい」と結婚した。共働きでないと、生活を維持するのは難しい首都圏で、娘は専業主婦に“させてくれる”男性を探して結婚。でもその男性は、「結婚しウチの人間になったのだから、実家に連絡するな」などと言い、娘の行動を制限していた。
「友達と連絡をするのも、外出するのも制限されていたようです。よくあるモラハラってやつだと思います。娘は内向的で芯が弱い。格好のターゲットだったと思いますよ」
里美さんは怒りをにじませながら言った。
「結婚1年目に孫が生まれて、友達もほとんどいない中で子育てして、あちらのお母様の言いなりになって12年間過ごしたんだそうです。まあ結婚生活ってこんなものかと思っていた頃に、家庭教師の男と出会ったんだそうです」
娘は自分の息子のところに来た22歳の大学生家庭教師を好きになってしまう。はかなげな印象でほっそりした42歳の娘は、十分に女性として魅力的だっただろう。
娘が置かれている状況や発言から、その大学生は「あなたの結婚生活は間違っているのではないか」と言い、お互いに心を寄せ合っていったと娘は言っているというが……。
「娘は“誰も味方がいないさみしい結婚生活の救いは彼だった”と言うけれど、その男がまともだったら、娘に金を貢がせたり、家で行為に及んだりしませんよね。娘は男性に免疫がない。最初から狙われていたんですよ」
浮気がバレたのは、それまでほとんど外出しなかった娘が頻繁に出歩くようになり、相手の男の家に通うようになってから。
「娘の旦那は娘のスマホにGPSをつけていて、どこにいるのか把握していたそうです。ホントにいやらしい男なんですよ。それで、その履歴を見せたそう。あとは寝室の隠しカメラ」
里美さんはその先は言わなかったが、娘は家で行為に及んだ。娘の夫は隠しカメラを仕込み、動画を証拠として残したのだろう。
「離婚後、娘はかなりメンタルをやられていて、心療内科に通っている。生きがいが全くないような顔をして、一日中ボーッとしている。こっちは慰謝料の300万円は払わされるわ、娘を養っていかなくちゃいけないわ、息子夫婦からお金をたかられるわで、泣きっ面に蜂が3匹来ているような気持ち」
【安易に親に頼る子供たちが溶かしていく老後資金…。次のページに続きます】