大学に進学したことで両親の干渉を受けないように
歩さんはやや勉強が苦手で、姉は成績優秀。しかし期待をかけられたのはどちらかというと歩さんのほうで、父親からはどちらも傷つけるような怒り方をされていたそう。
「僕に向かって、『姉に負けて恥ずかしくないのか』ってよく言っていましたね。『男として、長男として情けない』みたいな感じのことを姉にも聞こえるように大きな声で。僕的には、妹だったら少し情けない気持ちになるかもしれないけど、姉に対してはすごいな~って気持ちぐらいで、姉のことは純粋に尊敬していました。僕のほうが優秀であるべきという父の考え方は、姉のことも傷つけていたと思います。姉の勉強に対して父親はあまり何も言わなかった。そこにも違和感がありました。まぁ僕の成績が悪かったからというのも、もちろんあるんでしょうけど(苦笑)」
大学受験で失敗し、一浪を経て歩さんは有名私大に進学。歩さんの大学進学を機に、母親は再び契約社員として働き始めます。姉も数年前に地方の大学を選び、家を出たことで家族が揃うことがなくなっていったと言います。
「教育にうるさい父親だったので、受験に失敗した時は色々言われると構えていたんですが、実際は浪人するかどうかも僕に決めさせてくれました。多分僕に期待するのを諦めたんじゃないかなと。
幸いにも翌年には無事合格でき、大学生活は家族外の付き合いも増えて、実家で暮らしているんですが両親と顔を合わす機会が極端に減りました。すでに家を出た姉、そして再び働き出した母親と僕に興味を示さなくなった父親。仲が悪いわけじゃないけど、家庭内別居みたいな状態でしたね」
干渉されない生活は居心地が良く、顔を合わさないこと=揉めることもなくなっていきます。しかし、父親が早期退職したことで、両親のバランスが一気に変わってしまい……。
【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。