改正高年齢者雇用安定法による企業側のメリット・デメリットは?

この4月1日から、「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。
高年齢者雇用安定法は、高年齢者が活躍できる環境整備を図る法律です。
少子高齢化が急速に進行して人口が減少する中、経済社会の活力を維持するため、 働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮してもらうことを目的としています。

平成25年4月に施行された改正法では、60歳などで定年を迎えた社員のうち、希望者全員を65歳まで継続雇用する制度の導入が、企業に義務付けられました。

今回施行された改正法では、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、70歳までの定年引き上げや、継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入などの措置を講ずる“努力義務”が新設されました。
(厚生労働省 高年齢者雇用安定法改正の概要:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000694689.pdf

特に、シニア世代と呼ばれる60歳以上の方が多く活躍していると言われている建設業界では、この改正法によって多くのメリットがある一方で、さまざまなデメリットや課題も浮上してくる可能性があります。

そこで今回、JAGフィールド株式会社(https://www.jag-fld.com/)は、建設会社の経営者・人事採用担当者を対象に、「高年齢者雇用安定法改正による影響と期待」に関する調査を実施しました。

そもそもの“高年齢者雇用安定法”の認知度と講じている措置

はじめに、建設会社の経営者・人事担当者の皆さんが高年齢者雇用安定法そのものをご存じなのかどうか、伺っていきたいと思います。

「“高年齢者雇用安定法”のことは知っていますか?」と質問したところ、『65歳までの雇用確保義務があることは知っている(48.0%)』という回答が最も多く、次いで『法律の内容まで詳しく知っている(30.0%)』『法律があることは知っているが、内容について理解・把握はしていない(16.4%)』『この法律のことを知らなかった(5.6%)』と続きました。

「詳しく知っている」「雇用確保義務があることは知っている」を合計すると、8割近くの方々が、高年齢者雇用安定法についてある程度以上把握していることがわかります。

また『この法律のことを知らなかった(5.6%)』という回答はわずか5%台に留まっており、建設会社はほとんどが高年齢者雇用安定法を知っていると言えそうです。

高年齢者雇用については、実施している取り組みについてもお聞きしました。

「ご自身の企業で講じている65歳までの雇用確保措置を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『65歳までの定年引き上げ(70.7%)』と回答した方が最も多く、次いで『定年制の廃止(42.9%)』『65歳までの再雇用制度の導入(35.7%)』と続きました。

「定年引き上げ」という回答は、他の回答よりもかなりの差を付けて最多となっています。
再雇用制度の導入や定年制の廃止と比較すると、定年引き上げはスムーズに取り組める措置なのかもしれません。

改正法の変更内容の認知度

では、改正法に今回追加された努力義務について、皆さんはどう認識されているのでしょうか?

「改正高年齢者雇用安定法に追加された努力義務で知っているものを教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『70歳までの定年引き上げ(44.5%)』と回答した方が最も多く、次いで『70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(41.1%)』『定年制の廃止(35.1%)』と続きました。

ここでも「定年引き上げ」という回答が最多となりましたが、一方で「継続雇用制度」に関する回答も多くの数が集まっています。
多くの経営者・人事担当者は再雇用制度・勤務延長制度に関心があると言えそうです。

“努力義務”に応じる? 応じない?

ここまでで、建設会社の皆さんが改正高年齢者雇用安定法に追加された努力義務をかなり意識されていることが、明らかになりました。
ここからは、その努力義務について細かく伺っていこうと思います。

「追加された努力義務に応じていますか?」と質問したところ、約9割の方が『既に応じている(33.3%)』『希望者には今後応じる予定(57.4%)』と回答しました。

『応じていない(9.3%)』は1割にも達しておらず、ほとんどの建設会社が改正高年齢者雇用安定法の努力義務について、積極的なスタンスを取っているようです。

努力義務に「既に応じている」「今後応じる予定」と回答した方には、理由もお聞きしました。

「追加された努力義務に応じた(今後応じる)理由を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『シニア世代の従業員の知識・経験が現場で必要だから(49.6%)』と回答した方が最も多く、次いで『若い世代の従業員が少ないから(46.8%)』『若い世代の従業員の育成・教育のため(33.3%)』と続きました。

「若い世代の従業員が少ない」という回答は、少子高齢化に伴う人手不足の問題と言えるかもしれません。しかし「知識・経験が必要」「育成・教育のため」という回答は、シニア世代の能力が期待されていることを、はっきりと示すものです。

力を必要としているからこそ、建築業界では高年齢者雇用の努力義務に積極的な企業が多いのかもしれません。

なお、努力義務に応じていない企業に「追加された努力義務に応じていない理由を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『若い世代の採用を増やしたいから(36.7%)』と回答した方が最も多く、次いで『人件費を削減したいから(34.7%)』『事故やケガのリスクを減らしたいから(34.7%)』と続きました。

いずれも、もっともな理由ではあります。ベテラン社員の人件費は比較的高額となるため、世代交代を進めるためにも若手採用に注力したくなるのかもしれませんね。

シニア世代の継続雇用による企業目線でのメリット・デメリット

建設業界では、ほとんどの企業が改正高年齢者雇用安定法について認知しており、努力義務にも応じていることがわかったと思います。

では、この法改正が企業にもたらす具体的なメリットについて、皆さんはどうお考えなのでしょう。

「今回の法改正は、企業にとってどのようなメリットがありますか?(複数回答可)」と質問したところ、『人手不足を解消できる(41.6%)』と回答した方が最も多く、次いで『安心して業務を任せられる(35.9%)』『即戦力を確保できる(32.2%)』と続きました。

「業務を任せられる」「即戦力」は、いずれもシニア世代の能力を期待する回答であり、合計すると「人手不足」という回答さえしのいでいます。

建設業界がシニア世代にかける期待の大きさは、相当高いと言えそうです。

逆に「今回の法改正によって考えられる、企業にとってのデメリットや課題を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『世代交代が進まない(40.5%)』と回答した方が最も多く、次いで『労災事案のリスクが増加する(30.1%)』『若い世代の雇用枠が減る(28.3%)』と続きました。

「若い世代の雇用枠」という回答を合わせると、多くの企業がシニア層の雇用によって「世代交代」が課題となると見ているようです。

また労災事案リスクの増加も、リスク管理が重要視される昨今の企業にとっては、見逃せない点かもしれません。

“65歳以上”の雇用実績の有無と今後に期待すること

では、実際シニア世代を雇用している建設会社の割合はどれくらいなのでしょうか?

「今回の法改正前に65歳以上の方の雇用実績はありましたか?」と質問したところ、6割以上の方が『ある(61.7%)』と回答し、『ない(38.3%)』は4割弱となりました。

3分の2近くの会社が、既に高年齢者雇用を実践していることが明らかになりました。やはり建設業界は、シニア世代を「必要な人材」と考えているようです。

調査では、今回の法改正によって建設業界に期待していることについても、伺ってみました。

■改正高年齢者雇用安定法、私はここに期待します!
・労働力の確保ができコストが下がるかもしれない(30代/男性/東京都)
・優秀な職人さんの雇用と、その方によっての後継者育成(30代/女性/愛知県)
・貴重な経験が受け継がれること(40代/男性/千葉県)
・比較的肉体労働でもハードではないうちの特性が生きると思う(50代/男性/東京都)
・腕のいい職人がいれば若い人が成長する(50代/男性/大阪府)

即戦力やコスト削減を期待する声や、若い世代の育成を期待する声が目立ちました。
技術・ノウハウなどの継承において、人手不足と同等もしくはそれ以上の困難・課題を、現在の建設業界はかかえているのかもしれません。

シニア世代の能力は期待されている! 知識と経験を活かしてみては!

今回の調査で、建設会社の多くはシニア世代の雇用に積極的であることがわかりました。

リスクや課題を全く感じていないわけではないですが、それ以上に技術継承などの面でメリットや期待できることが多いと考えていることも、明らかになったと思います。

今回の法改正によってシニア世代の活躍の場がさらに広がることを歓迎・期待している建設会社は多いようです。

調査概要:「高年齢者雇用安定法改正による影響と期待」に関する調査
【調査期間】2021年4月12日(月)~2021年4月13日(火)
【調査方法】インターネット調査
【調査人数】1,057人
【調査対象】建設会社の経営者・人事採用担当者
【モニター提供元】ゼネラルリサーチ

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