人生を楽しむためには、移動の自由が不可欠。新しい生活様式の中で、自動車の位置づけが重要になりました。
ステイホームから、ステイマイカーへ。高齢ドライバーは認識力、判断力といった運動能力が衰え、愛車に乗る生活を続けるならばしっかり整えなくてはなりません。66歳にして現役のカーレーサーであり、お坊さん、そしてカージャーナリストでもある松田秀士が、技術、心得、機能といった3つの視点から安全運転寿命を延ばすレッスンを説きます。

3つの顔を持つ男が、三者三様の視点でアドバイス。あなたの運転寿命は、きっと延ばせる。

「二足の草鞋を履く」という言葉を耳にしたことは、ありますよね。単純にふたつのことに同時に取り組むとか、ふたつの仕事を掛け持つとか、そういう意味合いももちろんあるでしょう。一方で私は、そのニュアンスには両方のことに対してしっかりオーソリティになることを意味しているのではないか、と考えてきました。ですから、人生の紆余曲折の中で自身でも思ってもみなかった「三足の草鞋」を履くことになってからも、それぞれに真摯に取り組んできたつもりです。そんな取り組みの成果が、運転寿命を引き延ばすためのノウハウの蓄積に役立ってきたことは確かです。坊主でレーサーで自動車評論家……どれかひとつの職業が欠けても、おそらくこの本『安全運転寿命を延ばすレッスン』(小学館) は完成されなかったことでしょう。

お坊さんの視点で 「心の自由」を語ろう。

出生は四国の高知県。5歳まで母の実家である浄土真宗・本願寺派の寺で育ちました。

光明寺と言います。

いつの間にかその寺の跡取りと目されるようになり、宗門校である京都・龍谷大学に進学、無事に卒業することができました。その在学中に、僧侶にとっての「免許証」授与と言える得度式を経たことで、晴れて「お坊さん」になりました。

僧侶として活動する中でことあるごとに感じるのは、ご遺族の思いやりの深さです。墓前での納骨法要の時などには、「ありがとう」という心の声が聞こえてくることもあります。

法名(戒名)を考えるとき、個人の趣味や人柄をお聞きし参考にさせていただきます。そのとき故人がしっかりとその方なりの人生を歩まれたのだな、という生き様が見え隠れすることがあります。

個人的な興味もあって、「故人はクルマを運転されましたか?」という質問を投げかけることも少なくありません。すると、やはりたくさんの方が高齢になっても運転されていた実態がわかります。もちろん中には、自主返納されていた方も数多くいらっしゃいます。

そうしたさまざまな方の話を聴いていて感じるのは、高齢になるまで運転を続けていた方は皆さん、元気で自立した生活を送っていらっしゃったんだな、ということです。ライフスタイルの中でクルマという存在が、「いつでもどこにでも」という移動の自由を謳歌するためのサポートをしてくれていたように思えます。

ただし、そうした自由を謳歌するためには代償も伴います。運転能力に限ったことではなく、高齢化は身体的な能力を低下させてしまいます。一方で、そうした老化のスピードはある程度まで自分なりにコントロールすることができます。

鍛えるべきは、運動能力だけではありません。心の力、考える力といったメンタルな部分での「トレーニング」もまた、重要になってくるのです。

生い立ち。そして浄土真宗本願寺派僧侶に

1954年12月22日 高知県生まれ
1960年~大阪で育つ
1977年 得度。浄土真宗本願寺派僧侶となる
1979年 龍谷大学(京都)文学部仏教学科を卒業

レーサーの視点で 「鍛える楽しさ」を教えよう。

本格的に自動車レースを始めたのは1983年、私が28歳のときでした。一般的には、プロのレーシングドライバーを目指すには遅すぎるデビューでした。

それでも39歳で全米最高峰のビッグイベント「インディ500」※に参戦し、2年後の1996年には当時の日本人最高位という結果を残しました。その後も国内でもっとも人気のある「スーパーGT」シリーズに通算100戦以上出場し、還暦が近づいても数々の勝利を勝ち取ることができました。

このような自分自身の経験から私がお伝えしたいのは、運転する技術はいくつになっても進化する、上手くなることができる、ということです。

レースというとなんだかとても「特別なシーン」のように思われてしまうかもしれませんが、実は日々のクルマの運転もまた、ゴルフや野球などと同じ「スポーツ」なのです。ゴルフで良いスコアを出すために練習場に通った経験はありますか? 草野球のチームに入っていたりすると、バッティングセンターに足しげく通うことだってあるでしょう。

クルマの運転もそのようなスポーツとなんら変わりはありません。日々の運転が練習でもあり本番でもあり……要は、運転し続けることが重要なのです。

そうは言っても老視(老眼)が進んでしまったら、危ないじゃないか、と思われるのなら、あらためて老眼という現象のメカニズムを考えてみましょう。

身体がうまく動かないんだから仕方ないじゃないか、と思われるなら、あらためて運動能力を取り戻すためにできることを考えましょう。

大切なのは、そうしたメソッドを安全に効果的に続けるためのノウハウを知ること。そこでレーシングドライバーとしての私の経験が、お役に立つはずです。

レーサーデビュー。「インディ500」に参戦

1983年 28歳にしてレースデビュー
1985年 F2シリーズにステップアップ
1987年 全日本F3000シリーズに参戦
    (1991年まで)
1994年 北米インディ500に参戦。日本人2人目
    国内スーパーGTシリーズに初参戦
1996年 インディ500にて
    日本人最高位(当時)の8位入賞
2000年 インディ500でクラッシュ。
    生死の境をさまよう
2007年 ドイツ ニュルブルクリンク
    24時間耐久レースに初参戦
    (以降、2008年、2010年に参戦)
2010年 国内スーパーGTシリーズ
    参戦100戦目超え
    グレーテッド・ドライバーとして表彰
2016年  スーパー耐久シリーズに参戦

※インディアナポリス 500、F2シリーズ…フォーミュラ2シリーズ、全日本F3000シリーズ…全日本フォーミュラ3000シリーズ、ルマン24時間、スパ24時間、デイトナ24時間、マカオGP

評論家の視点で 「好きになって」もらおう。

評論家生活のスタートは、レースを始めた頃とほぼ同じ。ある先輩評論家に「これからのレーサーは書くこともできなければ」と、言われたのがきっかけです。

ポール・フレール(故人)という世界的に有名な自動車評論家がいました。彼はその昔、F1GPでも活躍したレーサーでもありました。そして、私も彼のような評論家を目指したいと考えました。自動車メーカーが主催する試乗会に出向き、新型車に試乗。その車を開発した技術者と懇談し、新しい技術への造詣を深めてゆくことはとても興味深く、勉強になるものです。

クルマは常に進化しています。しかし、いくら進化しても、運転する人のスキルは変わらず重要です。やはり、運転が上手な人ほど事故を起こしにくいのです。

運転が上手になるためには運転が好きになることが第一。クルマを運転して行動範囲が広がり、さまざまな刺激で活性化する自分を想像すれば、きっと運転が好きになるはずです。

カーof ザ・イヤー選考委員も歴任

1983年 評論家活動をスタート
2000年 日本カーofザ・イヤー選考委員に
2006年 ワールド・カーofザ・イヤー選考委員に

松田秀士
まつだ ひでし/1954年高知県生まれ。浄土真宗本願寺派僧侶。1級小型船舶免許。BOSCH認定CDRアナリスト。漫才ブームの1980年代に北野武氏の運転手を務め、 28歳でプロレーサーを目指す。1983年、鈴鹿シビックレースでのデビューに始まり、わずか3年で国内トップフォーミュラーまで上りつめ、海外レースでも活躍。ルマン、デイトナ、スパ、ニュルブルクリンクの世界4大24時間レースに出場。1994年から4度出場したインディ500(米国)では当時の日本人最高位の8 位を獲得。また国内スーパーGTには100戦以上出場したグレーデッドドライバー。ポルシェ使いともいわれ、スーパーGTでのポルシェ優勝も数多く記録している。66歳の現在も現役レーサー。日本カー・オブ・ザ・イヤーとワールド・カー・オブ・ザ・イヤーの両選考委員も務め自動車評論家としても活動。死ぬ瞬間まで元気でクルマを安全に運転し楽しめる自分であることを目指す「お浄土までぶっ飛ばせ!」をスローガンとしたスローエイジングを提唱している。

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