選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
今年はレナード・バーンスタインの生誕100年である。20世紀を代表する大指揮者であり、ミュージカル『ウェストサイド・ストーリー』で知られる作曲家であり、教育者としてもすぐれた業績を残したバーンスタインを再発見するうえで重要な新譜が出た。『バーンスタイン:ミサ曲』である。
バーンスタインは、あらゆる境界線を打破し、相手が大統領であろうと無名の小さな女の子であろうと、全く態度を変えず、差別を決してしない民主主義者・平和主義者であった。そんなバーンスタインが書いたミサ曲は、ただの純粋な祈りではなく、現代社会を反映して、迷いも混沌も含め、ありのままをさらけ出すような音楽だ。
マーチングバンドやゴスペルやロックやジャズの要素もあるカラフルな作品である。ヤニック・ネゼ=セガンの指揮は、生き生きとはちきれんばかりのエネルギーで、どんなジャンルの音楽愛好者をもきっと巻き込むに違いない。
【今日の一枚】
『バーンスタイン:ミサ曲』
ヤニック・ネゼ=セガン指揮 フィラデルフィア管弦楽団、他
2015年録音
発売/ユニバーサル ミュージック
電話:045・330・7213
販売価格/5000円(税込み)
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文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2018年10月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。