選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)

ハンガリー出身の作曲家バルトーク(1881~1945)ほど、ここ数十年で受け入れられ方が変わった人もいない。40年ほど前は、無機的でモダンな“現代音楽”と思われていたが、今は違う。村から村を渡り歩いて民謡を集めたことからも想像されるように、民俗的で古いものを大切にする人だったのだ。その響きは、東洋的でなつかしいものなのだ。

そういった意味で、このたび決定打ともいえる名盤が登場した。

1976年生まれのヴァイオリニスト、ルノー・カピュソン、1971年生まれの指揮者フランソワ=グザヴィエ・ロトという、今のフランスを代表する二人の共演による『バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1&2番』である。

冒頭のヴァイオリンだけでも、ゾクゾクするような興奮が伝わってくる。ロンドン交響楽団もダイナミックなリズムが肉感的ですらある。これは“木の匂いのするような”と形容したいほど、生々しい音楽だ。

【今日の一枚】
バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1&2番
ルノー・カピュソン(ヴァイオリン)
フランソワ=グザヴィ
エ・ロト指揮
ロンドン交響楽団

2017年録音
発売/ワーナー
ミュージック・ジャパン

http://www.wmg.jp/inquiry.php
販売価格/2600円

文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)

※この記事は『サライ』本誌2018年7月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。

 

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