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いつも食べてるきのこは花!意外と知らない「きのこ」本当の姿

文/柿川鮎子

多くの人は「きのこ」というと、地面から軸が伸び、三角形の傘をもつ姿を想像するでしょう。マツタケやシメジの炒め物、乾燥シイタケなど、食用きのこは日本の食卓に欠かせない食材です。

でも、きのこの専門家によれば、地面から上の部分は「子実体」と呼び、繁殖に使われる器官で、植物でたとえるならば花のようなもの。きのこの本体は、地面の下にいる「菌糸体」と呼ばれる部分のほうなのだそうです。つまり、私たちはきのこの「花」の部分だけを“きのこ”と呼んで、美味しく食べていたのですね。

きのこの専門家である根田仁さんは「本来は大きな子実体をつくる菌類のことを“きのこ”と言うのですが、子実体そのものを“きのこ”と呼ぶことが普通になっています。でも普段は地下にあって見えない本体があることを知っていると、自然観察が楽しくなりますよ」と教えてくれました。

■私たちが食べているきのこは花だった

日本人の食卓に欠かせないきのこですが、きのことは何なのか、改めて問われると意外と答えられないもの。実はきのこは植物でも動物でもない多細胞生物(菌類)です。菌というと、まっさきにカビを連想しますが、きのこもカビの仲間。その菌類の中で、人間の目に見える大きさの子実体をつくるものを“きのこ”と呼んでいるだけなのです。

この子実体は、きのこの胞子をつくる器官で、私たちが美味しく食べる三角形の傘と軸の部分のことです。きのこは胞子を飛ばして繁殖するので、植物で例えるならば、子実体は花粉を飛ばす花であると言えるでしょう。

きのこに関してはまだわからないことが多いと根田さんは言います。

「わからないことだらけですが、きのこが落ち葉や枯れ木を分解したり、樹木と共生し、森林環境に大きな役割を果たしていることが知られています。マツやシラカンバなどは荒地で育つ樹木ですが、マツタケやベニテングタケなどのきのこと共生することで、荒地でも生育することが可能になります。また、昆虫などの動物は子実体を食べ、その昆虫を食べて生きる野鳥がいて、自然環境が保たれています」

きのこが自然に果たす役割は大きいと、根田さんは教えてくれました。

■きのこが森の自然を守っていた

秋に地面に落ちた葉は、きのこによって分解されたり、ミミズなどの土壌動物に食べられたりして、最終的には土になります。植物によって生えるきのこの種類が異なることは、マツタケでよく知られていますね。松の木に生えるからマツタケです。根田さんもマツタケの生育に関する研究を行ったことがあるそうですが「人の手でマツタケを生育させるのは本当に、きわめて難しい」と言っていました。

マツタケは松の木と共生しています。マツ科、ブナ科などの木はきのこと菌根と呼ばれる共生体をつくります。きのこの菌根は、きのこの菌糸が木の根を覆い、細胞のすき間にも入った状態のこと。木の根はきのこの細胞に覆われることにより、木にとって有害な微生物から身体を守ったり、水分や無機養分を土壌中に伸ばした菌糸を通じて吸収することができます。その一方、きのこの方は木の根からブドウ糖などの養分をもらいます。どちらにとっても有益な関係となっているのです。

樹木の生育を助け、子実体が動物の餌となり、森林環境を豊かに保つ役割を果たしてきたきのこ。知れば知るほどその奥深い魅力の虜になります。

きのこについてもっと詳しく知りたい人には根田さんの著書『きのこミュージアム―森と菌との関係から文化史・食毒まで』(八坂書房刊)もおすすめ。

取材協力/根田 仁
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所、研究ディレクター(生物機能研究担当)。1957年東京生まれ。1980年東京大学農学部林学科卒業。博士(農学)。1982年から農林水産省林野庁林業試験場(現・森林総合研究所)に勤務。きのこの分類・栽培などの研究に従事。著作に全国農村教育協会発刊「たのしい自然観察 きのこ博士入門」など。

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

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