I:事前に幾度もきかされていましたが、『コメディーお江戸でござる』のことですよね。えなりさんは1995年~2002年に同番組にレギュラー出演していました。えなりさんがまだ小学生の時分ですね。『コメディーお江戸でござる』での経験は今回活きているかということを聞いてみました。
そうですね。僕も『お江戸でござる』チルドレンだと思っておりまして。『お江戸でござる』で僕のことを知ってくださった方もたくさんいて。毎回、杉浦日向子先生という江戸風俗研究家の先生が教えてくださるんですが、その内側に入れたんだなというおもしろさと、やっぱり役立ってるのは、和服をあの年齢から着慣れさせてもらって、稽古着から自分で着られるようになって。それまでは着流しだけだったんですけど、今回をきっかけに袴と羽織も自分で着られるようになったので。あと、武士の刀の差し方……位置でありますとか、腰骨のここに入れると痛くないんだなとか、そういうのを小学校5年生ぐらいの時に経験させてもらっていたので、着物を着たことで緊張感が高まるとか、変なギアが入っちゃうとか、そういうことはなく入れたのは『お江戸でござる』のおかげだと思っています。仲間に入れていただいた伊東四朗さんに感謝しています。
A:かつて『お江戸でござる』を楽しみにしていた視聴者にとっては感涙ものの答えですよね。あの番組がやっぱりいい影響を与えていたなんだなってことを確認できたのもそうですし、短い回答の中に杉浦日向子さんと伊東四朗さんの名前をちりばめてくる。えなりさんの人柄がしのばれる「名場面」です。実際、わたしも杉浦さんが生きていたら『べらぼう』をどういうふうにみていただろうと気になって著書の『一日江戸人』を読み返してみたりしていたので、当時の出演者のえなりさんと思いが共有できている、とうれしくなった瞬間でした。
I:さて、この後に、えなりさんが好きな時代劇作品はなんですか? って質問をしたんですよね。
A:はい。えなりさんの回答をどうぞ。
藤枝梅安ものは拝見していたので、やっぱり渡辺謙さん版も大好きでしたし、大河ドラマでいうと『元禄繚乱』は見ていましたね。なんか不思議だなと思って。みんなが知っているストーリーなのに、なんでこんなにワクワクするんだろうっていう。これはやっぱり時代劇のおもしろさですよね。今回の『べらぼう』もそうですけど。史実の間を作家の先生、演出の監督さんたちが、おもしろく、楽しく作ってくださる感じが好きだなっていう思いです。
A:きわめてざっくりした仕分けになりますが、時代劇ファンには池波正太郎派と藤沢周平派があって、もちろん両方とも大好き! という方も多いのですが、えなりさんがあげたのは「仕掛け人 藤枝梅安」でした。もちろんほかにもたくさんの時代劇作品があがってくるんでしょうが、『べらぼう』で田沼意次を演じている渡辺謙さんも出演している「藤枝梅安」。なんだか見たくなっちゃいますよね。
I:私が気になったのは、大河ドラマ『元禄繚乱』(1999年)をあげていることですね。ウィキペディアによるとえなりさんは、四十七士の名前をすべて諳んじられるそうです。
A:いや、本当は「四十七士のなかでいちばん好きなのは誰ですか」と聞きたかったのですが、本筋とは離れているので聞きませんでした。いつか聞いてみたいですね。
I:えなりさんの大河ドラマ出演は今回が初めてだそうですが、今後いろんな作品に登場してほしいですね。
A:いや、ほんとそうですね。
●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ~べらぼう~蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。同書には、『娼妃地理記』、「辞闘戦新根(ことばたたかいあたらいいのね)」も掲載。「とんだ茶釜」「大木の切り口太いの根」「鯛の味噌吸」のキャラクターも掲載。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
