『光る君へ』名曲コンサート「沼ル音楽会」。(C)NHK

編集者A(以下A):もう1か月ほど前のことになるのですが、東京オペラシティのコンサートホール「タケミツメモリアル」で「大河ドラマ『光る君へ』コンサート~沼ル音楽会~」が開かれました。初台駅直結の瀟洒なコンサートホールに集まったのは1600人。うらやましいなと思ったのはちらほらと子どもたちの姿が見受けられたことです。

ライターI(以下I):大げさではなく、みなさん目を輝かせて参加されていたのが印象的でした。この日演奏されたのは、『光る君へ』の劇中で流れた劇伴26曲!(アンコール2曲含む)。

A:26曲といっても、実際には150曲以上つくられたということですから、ごく一部なわけです。当日は、音楽を担当した冬野ユミさんも登場されたのですが、心の底から楽しそうで、観ている私たちまで楽しくなってしまいました。そして平安時代のドラマということでオープニングを飾ったのは、宮田まゆみさんが奏でる「笙(しょう)」。笙は龍笛(りゅうてき)や篳篥(ひちりき)とともに雅楽を構成する古代から伝わる楽器で、17本の竹管を蜜ろうでとめて振動させることで音を出す邦楽器です。ものすごく難しい楽器です。

I:現代にも伝わる宮廷の雅楽にも通じますからまさにオープニングを飾るにふさわしい調べでした。その後、いよいよ音楽会本番、最初の曲は冬野さん自らオペラシティのパイプオルガンで「X’mas Night」を演奏してくれました。しびれました~。

吉高由里子さんも紫のドレスで登場

I:実は当日のコンサートですが、舞台の上には大きなスクリーンが誂えられていて、「まひろと三郎の出会い」「廃屋での逢瀬」「石山寺で偶然の再会」などのシーンが音楽にあわせて映し出されました。

A:映画音楽を愛好する方は多いですが、ドラマの名場面とシンクロさせた演出は粋でしたね。なんだか涙を流しながら聴きいっていた人もいたくらいです。聴衆の中にいたお子さん方にとっては一生の思い出になったのではないでしょうか。かくいう私も大人になってから大河ドラマ全曲集など購入した口ですから、「ああ、子どもの頃にこういうコンサートに触れたかった」となんだかセンチな気分になったりもしました(笑)。

I:当日は、紫色のドレスをまとった吉高由里子さんも舞台上にあらわれて、幕間には赤染衛門役の凰稀かなめさんがストーリーテラーとして登場しました。Aさんは思い出深い曲はありましたか。

A:やはり、平安時代が舞台なのにエレキギター炸裂の「Broken Wings」はどうしたって印象に残りますよね。意外なのに、まひろと道長のロマンティックなシーンに見事にハマってましたからね。

I:強烈な印象でしたよね、「平安エレキギター」。こういうイメージで曲を書かれたのかなって勝手に想像していたのが、まるで違ったりとか、冬野さんのお話しを聞くことができたのも良かったです。

A:最後まで演奏が終わって、そうか、今回はテーマ曲はあえて演奏されないんだな、って思っていたら、アンコールでテーマ曲の「Amethyst」が演奏されて、ぐっときました。

I:毎週見ている『光る君へ』の、根本知先生の題字が頭の中に浮かび上がってきて、最後の最後で底なし沼に落ちていく快感がありましたね。

A:26曲2時間強の時間があっという間に過ぎたのですが、この日の模様は12月8日(日)の17時からNHK総合で放送されるそうです。尺は約1時間。しょうがないといえばしょうがないですが、短縮版になります。

I:ところで、このコンサートのタイトルに「沼ル」という言葉がありました。老婆心ながら説明すると、沼にずぶずぶはまっていくような、ということですね。吉高さんも「沼りました」といっておられました。

A:間違いなくあの会場にいた全員が沼ってましたね。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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