藤原一族の氏寺興福寺の別当がやってくる
A:そして第33回の後半に、奈良興福寺の別当定澄(演・赤星昇一郎)が大勢を引き連れて都にまで押し寄せ威圧する様子が描かれます。興福寺はもともと藤原一族の氏寺。氏寺の別当がご当主に訴え出て来るという不思議な空間ですが、この事件は、当時大和の国司を務めていた源頼親(みなもとのよりちか)と実質的に大和を牛耳る興福寺との諍いが背景にあるともいわれています。
I:源頼親の弟頼信が、源頼朝の先祖になるという関係ですね。
A:はい。しかも興味深いのは、源頼親は道長に仕える武士であったことです。劇中では源頼親が登場する気配もないですが、「道長グループ内」の内輪揉めのような感じがしないでもないのですが……。
I:なんだか面白そうですが、武士をキャスティングしない『光る君へ』でこの顛末がどのように描かれるのか興味深いですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり