最近、パソコンやスマートフォンの普及により、自ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く⼒が衰えたと実感することもあります。
脳トレ漢字の記事を読みながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。
「脳トレ漢字」第193回は、「葱頭」をご紹介します。様々な料理に使われている「葱頭」。実は、大変長い歴史を持つ食材なのです。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「葱頭」とは何とよむ?
「葱頭」の読み方をご存知でしょうか? 「葱」が少し難しいですが……
正解は……
「たまねぎ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「ヒガンバナ科ネギ属の野菜。高さ約50センチ。地下の鱗茎(りんけい)は球形または偏球形で、刺激性のにおいをもち、食用。」と説明されています。サラダから炒め物まで、様々な料理に使われる「葱頭」。「玉葱」の漢字の方が馴染みがあるかもしれませんが、こちらも「たまねぎ」と読みます。
葱頭と言えば、北海道産と淡路島産のものがよく知られていますね。淡路島産の葱頭は、主に9月頃に種をまき、3~5月に収穫するそうです。対して、北海道産の葱頭は、春に種子をまいて、秋に収穫する「秋タマネギ」と呼ばれるタイプが多いです。
「葱頭」の漢字の由来は?
「葱頭」は、「玉のような形をしたネギの仲間」という意味に由来するそうです。また、葱頭は英語で「onion」と呼ばれますが、これは「真珠」という意味を持つラテン語の「unio」に由来すると考えられています。
古来より、葱頭は栄養が豊富な野菜として重宝されていたため、このような名前になったのではないでしょうか?
葱頭の歴史
シャキシャキとした食感がくせになる「葱頭」。中央アジアで生まれたとされる葱頭の歴史は大変古く、約4000年前の古代エジプトで栽培されていたそうです。ピラミッド建設の際、労働者に葱頭を食べさせて労働に従事させたという記録も残っています。
その後、葱頭はヨーロッパ全域に広まりました。14世紀中頃、ヨーロッパでペストが大流行した際、ロンドンで葱頭とニンニクを販売していた店は感染を免れたと言われています。そのようなこともあり、イギリスでは葱頭を重要野菜として扱っていたそうです。
スペインとポルトガルを中心に大航海時代が始まると、葱頭はアメリカ大陸にも伝わりました。アメリカでは品種改良が盛んに進められ、様々な品種が誕生したそうです。日本の導入種も、アメリカ系のものが多いとされます。
日本では、1627年から1631年に、長崎で葱頭が栽培されていたという記録が残っていますが、当時の品種は定着しませんでした。その後、1871年に欧米から種子が導入され、北海道で葱頭が栽培されることとなります。
当時の日本では、「三日コロリ」と呼ばれるほど致死率の高い「コレラ」が大流行していました。そのような状況で、「葱頭がコレラに効く」という噂が広まり、葱頭は爆発的に売れるようになったそうです。ネギに似た風味で、どんな料理にも合わせやすい葱頭は、身近な野菜として日本でも普及するようになったのです。
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いかがでしたか? 今回の「葱頭」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 日差しが暖かくなり、新玉ねぎの季節がやってきました。色々なレシピに活用して、春を味わってみるのも良いですね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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