運営主体は個人、地域の生産者グループ、企業・第三セクター、JA(農協)とさまざまで、国道沿いの道の駅や、最近では高速道路のサービスエリアにも続々と誕生しています。
農家の庭先で時おり見かける野菜や花、卵などの無人販売も、考え方としては直売所といってよいでしょう。
共通点は「生産者自身が商品を売り場に並べる」「値段は自分の裁量で決める」ということ。例外はありますが、基本的には間に流通業者が入りません。だから直売所なのです。
生産者にとってのメリットは、市場出荷品のように大きさや見かけのよさといった規格に縛られずに生産できる点です。好きなものを育て、自分の考えでお客さんに提案することができます。値付けも自分で判断してよいので、ひと品あたりの手取りが高いことも魅力です。
利用者にもたくさんの利点があります。まず、農家が直接持ち込むので、新鮮なうえに値段が安い。パッケージには生産者の個人名が入っているので、安心感もあります。ときには野菜を並べにきた農家から、とっておきの食べ方を教えてもらえることもあります。
もうひとつの大きな楽しみは、街のスーパーにはない個性的なものが買えること。知名度が低い、生産量が少ないなどの理由で全国流通していないものの、地元では熱狂的に愛されている食材や加工品なども並んでいます。
どこへ行っても同じ景色ばかりで、つまらなくなったといわれるいわれる日本ですが、こと食に関しては、まだまだその土地ならではのものを見ることができます。直売所は、いわば文化の窓。これからしばらく、全国各地の農産物直売所で目についたモノやコト、気になった味などを紹介していきたいと思います。
鹿児島の道の駅で出会った小さな蜜柑とこだわりのひじき
さて、今回は、鹿児島・桜島の道の駅「桜島」にある『火の国めぐみ館』を訪ねました。
桜島には、ギネス記録級のふたつの伝統作物があります。蜜柑の仲間としては世界一小さな「桜島小みかん」と、ギネス記録は31㎏、小さなものでも10㎏はあるという、丸く巨大な「桜島大根」です。
道の駅桜島の前では、季節になるとこの二大名物が育っている様子をみることができます。今シーズンはともに終わってしまいましたが、桜島大根は種採りのために5月頃まではそのまま植えてあるそうです。
桜島には、もうひとつ名物食材があります。目の前の錦江湾でとれる「桜島ひじき」です。桜島の溶岩に付着して育ったこの地のヒジキは、ボイラーを使わず昔ながらの天日乾燥で仕上げ続けるというこだわり品。その上品な食感、風味は煮物にしても炊き込みご飯にしても評判で、ひじきを目当てに訪れるリピーターも多いそうです。品切れしない限り、桜島ひじきは通年購入することができます。
道の駅桜島『火の国めぐみ館』
住所/鹿児島市桜島横山町1722-48
電話/099・245・2011
直売所の営業時間/9時~18時
休館日/毎月第3月曜日(祝祭日の場合は翌日)
文/鹿熊勤(かくま・つとむ)
茨城県生まれ。ナチュラルライフ、一次産業・モノづくりなどの分野で執筆活動を続ける。『サライ』には創刊から参加。旅先の農産物直売所で、ご当地食あふれる食べ物を発掘するのが趣味。著書に『糧は野に在り』(農文協)、『葉っぱで2億円稼ぐおばあちゃんたち』(小学館)。