取材・文/鳥海美奈子
2月中旬、都内で「第3回日本ワイン ピノ・ノワールサミット」が開催されました。日本各地からワイン生産者が集い、消費者と交わりながら、ピノ・ノワールを試飲提供するイベントです。
涼しい気候を好み、病害が出やすいピノ・ノワールは、日本では栽培が難しい品種と言われてきました。しかし近年、北海道や長野など冷涼な地域を中心に、日本でもピノ・ノワールのワインが造られて、注目を集めています。
その象徴的存在が、北海道・余市にあるドメーヌ・タカヒコです。栽培醸造家の曽我貴彦さんは、「自分が最も好きで、情熱を傾けることのできるぶどう品種」として、10年前にドメーヌを設立して以来、ピノ・ノワールのみを栽培し続けてきました。
その「ナナツモリ ピノ・ノワール 2017」が、デンマークの世界的に有名なレストラン『noma(ノーマ)』のワインリストに載ることが決まりました。『ノーマ』は「世界のベストレストラン50」で1位を4度獲得、ワインリストもビオに絞った先駆的な内容で知られます。「ジュラやブルゴーニュのワインとともに試飲しましたが、フレーバーが豊かでぶどうの表現力も素晴らしかった」とソムリエはその選考理由を話しました。
今回、「ピノ・ノワールサミット」に出展していた曽我さんは、「ノーマはすぐれた食材にこだわり、その良さを引き出す料理と聞いています。そういったレストランに自分のワインが評価されたことは、素直にうれしいです。日本は雨が多いのでピノ・ノワールの栽培は難しいとずっと言われてきましたが、僕はそうは思いません。雨が多いと、ぶどうも凝縮感ではなく、やさしい繊細な味わいになります。そういった日本ならではの風土を映したピノ・ノワールの魅力を表現できるはずです」と語ります。
「ワインの王様」とも称されるピノ・ノワールの優美な味わいは、飲み手だけでなく生産者の心をも惹きつける力に満ちているのです。
やはり「ピノ・ノワールサミット」に出展していた栃木にあるココ・ファームは、北海道余市の栽培農家「木村農園」のぶどうを使ってワインを造っています。木村農園は1980年代前半からピノ・ノワールをいち早く栽培していたことで知られ、そのぶどうの質の高さから多くのワイナリーがともに仕事をしたいと望む存在です。ココ・ファームの醸造担当・柴田豊一郎さんは、「栃木ではピノ・ノワールの栽培は難しいので、北海道という栽培に適したところで育ったぶどうを使用しています」と語ります。
そして近年、産地として注視を集めるのが長野県の千曲川ワインバレーです。標高650~900mの高地に畑があり、県内でも特に涼しい気候であることから、ピノ・ノワールの栽培に向くと言われています。その気候を反映して、リュードヴァン、ヴィラデストワイナリー、はすみふぁーむ&ワイナリー、信州たかやまワイナリーなど、多くのワイナリーが出展していました。
さらに、新潟にあるカーブドッチの栽培醸造家・掛川史人さんは、「僕たちの畑は日本海に近く、砂質土壌です。砂質だと、より軽やかで空気感を含んだ繊細なピノ・ノワールの味わいになります。新潟ならではの特徴を映したピノ・ノワールを飲んでもらいたい」と言います。
地域により異なる個性が表現され、飲み比べもできるようになった日本のピノ・ノワール。今後のさらなる味わいの向上と発展が楽しみです。
取材・文/鳥海美奈子
2004年からフランス・