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美味

これが戦国の味!忍者の携帯食「兵糧丸」を食べてみた

文/鈴木拓也

戦争の歴史をひもとけば、戦(いくさ)で雌雄を決するのは、兵力よりも補給の巧拙によるところが大きい。とくに糧食の補給は戦の要であって、百万の軍勢であっても、飢えてしまえば無力に等しい。当然、戦国乱世の時代においても、戦国大名らは兵糧の補給に悩み知恵を絞った。

兵力の中核をなす足軽は、1日に5合の米の支給があったが、ほかに副食や水が要るので、糧食を途切れることなく補給し続けるのは至難の技であった。そのため、少量食べただけで、空腹をしのげる糧食の必要性が生まれた。

「兵糧丸」(ひょうろうがん)とは、補給を少しでも楽にしたい戦国大名の悲願の末に生まれた携行食である。上杉謙信や武田信玄など名だたる戦国大名が、兵糧丸の価値を認識し、活用していたことは意外と知られていないが、当時この携行食の製法は軍事機密であって、公にされなかったことが影響しているのかもしれない。

それもあって、兵糧丸の材料や製法は開発者によってまちまちで、例えば竹中半兵衛の兵糧丸は、薬用人参、もち米、ごまを冷水に浸したのちに干して粉末状に砕き、また水につけて丸く固めたもの。これが甘党の德川家康だと、黒豆、黒ごま、片栗粉、砂糖となる。

■忍者が研究開発したエナジーフード

兵糧丸の研究開発にとくに力を入れたのが、忍者である。なにしろ、軽装ないでたちで何日にもわたる潜伏活動を行うのだから、必然的に糧食は最小にして最大限の栄養効果を発揮するものでなくてはいけない。

そのため、兵糧丸の材料は、薬用人参、そば粉、小麦粉、山芋、甘草、ハト麦、もち米、酒というふうに種類が多く、栄養素がまんべんなく摂取できるようになっていた。1日に2~3個食せば、飢えを遠ざけることができたという。

現代のエナジーバーの祖先ともいえる兵糧丸であるが、これを昔ながらの製法で今に伝えるのが、伊賀の里の菓子屋である紅梅屋だ。正徳2年(1712年)の創業で、現在の店主で11代目というから、まさに老舗中の老舗である。

ここで販売されている『伊賀流 兵粮丸』の材料は、米粉、ねりごま、粉糖、菜種油、はちみつとなっており、常温保存で賞味期限は15日間。5個入りが540円となっている。地元直営店のほかに、電話やネットでの注文も可能となっている。

さっそく『伊賀流 兵粮丸』を取り寄せて、実食してみた。

届いた品は、箱に入った円筒形のプラスチック容器(左)で、この中に直径2センチほどの兵粮丸が5個入っている(右)。

色は黒ごまの黒で、ほとんど香りはしない。和三盆のような、ぱさぱさした印象を受けるが、口に入れると水気はないものの、そこまでぱさついた食感ではない。ごまの濃厚な風味をやや甘くしたような味だが、クセはなく、何個でも食べられそうであった(実際筆者は、一人で5個を平らげてしまった)。

飽食世代の我々は、お菓子感覚でいくつでも食べてしまう。が、できれば、かつて過酷な任務についた忍者に思いを馳せつつ、滋養強壮を兼ねた間食として一度に1個だけありがたく頂くのが「通」であろう。

とまれ、忍者ファンでなくともお勧めしたい、今につたわる戦国時代の味である。

【参考資料】
『戦国の食術』(永山久夫著、学研新書)

【兵粮丸についてのお問い合わせ】
紅梅屋
■住所/三重県伊賀市上野東町2936
■電話/0120-19-0028(9時~19時)
■フファクス/0595-21-0195
■店舗営業時間/9時~18時
■公式サイト:http://www.koubaiya.com/index.html

文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。

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