
マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、評価基準や評価項目について考察します。
はじめに
どちらともいえる明確な基準がない、評価者によって甘い厳しいが発生する……。判断のわかれやすい成長管理項目のために、どのように行動すべきか迷った経験はないでしょうか。また、評価者側も、評価をする部下の顔がチラついて、大きなストレスを抱えてしまうこともあるようです。
この記事では、曖昧な評価基準がもたらすパフォーマンスの低下の危険性を指摘し、正しい目標設定の仕方について識学的視点から解説します。
定量的目標と定性的目標を効果的に設定するためには
定量的目標と定性的目標を効果的に設定するための考え方について、4つの視点で整理していきます。
1.定量的目標の意義とメリット
「定量的目標」とは、売上高、コスト削減率、採用人数、離職率改善率など、数値で達成度を測定できる目標です。最大のメリットは、成果が客観的に評価できることであり、基準が明確にあるため、上司と部下の間で認識の齟齬が生じにくく、評価の透明性も高まります。
また、進捗を定期的に確認しやすく、成果管理やPDCAサイクルの運用にも適していることもメリットといえるでしょう。
さらに、数値目標は組織全体の方向性を統一しやすい点でも有効です。例えば、「採用コストを10%削減」「従業員満足度を80点以上に引き上げる」といった目標は、達成基準が明確なため、組織としての戦略遂行を強力にドライブしやすいのです。
その一方で、数値だけに偏ると、短期的な成果に目が向きやすく、行動の質が軽視されるリスクも気を付けなければなりません。
2.定性的目標の重要性
「定性的目標」とは、行動や姿勢、チームへの影響といった「目に見えにくい成果」を扱います。例えば、「メンバーの意見を引き出す会議運営を行う」「信頼関係を構築する」「人材育成の質を高める」といった内容です。これらは数値では測れませんが、組織の持続的成長には欠かせない領域ともいえます。
定性的目標の最大の価値は、行動の方向性を示し、成果に至るプロセスを支えること。 例えば、採用人数という定量目標を追うだけでなく、「候補者とのコミュニケーションの質を高め、企業イメージを向上させる」という定性的目標を並行して設定することで、長期的な採用力の強化につながります。また、個人の行動習慣やマインドセットを変える契機にもなり、組織文化の醸成に寄与するといえるでしょう。
3.定性的目標を有効に設定する3つのポイント
識学では、主に定量的目標をベースにしています。目標を設定し、達成か未達成を明確に判定し、未達成からどのように行動を変化させ、再チャレンジさせるかによって、成長を促す管理を推奨しているためです。つまり、定量的目標を重視すると、スピード感を持ってできなかったことができるようになるという個人の成長が組織の成長に寄与するのです。
しかし、組織の文化、ブランドを作る定性的な目標を否定しているわけではありません。例えば、「挨拶をする」「身だしなみを整える」「整理整頓をする」という一般的なものをルール化することは、むしろ定量的な目標よりも必要なものと考えます。そもそも当たり前の基準を言語化することで、組織で意識をそろえて、定量的な「できる・できないが存在するもの」に集中できるようになるのです。
数値化しにくいと言われる業種(介護福祉、医療など)では、「評価が平等でない」「好き嫌い」というような感情的な問題が起因となり、休職や集団退職につながることもあります。
(1)目的を明確にする
まず、「何のためにこの目標を設定するのか」を明らかにすることが出発点です。例えば、「チームの信頼を得る」「部下の自律性を高める」「他部署との連携を円滑にする」など、目的が具体的であるほど、行動が定まりやすいものです。
そもそも目的が不明確なまま「リーダーシップを発揮しろ」と掲げても、行動の基準がはっきりしないでしょう。その力みが空回りを生むことになるのです。
(2)行動レベルに落とし込む
次に、定性的目標を「どのような行動で示すか」に変換することが重要です。
例:
・「信頼関係を築く」 → 月1回の1on1面談を実施し、課題を傾聴する
・「リーダーシップを発揮する」 → 会議で決定事項を明確に言語化し、実行責任を持つ
・「風土を良くする」 → 対立が起きた際には24時間以内に当事者間の対話を促す
このように行動が明確であれば、自己評価や他者評価の際にも数値化され、一貫した判断が可能になるでしょう。
(3)成果の兆しを設定する
数値で測れない定性的目標については、成果の兆し(サイン)を設定しておくと効果的です。
例:
・メンバーから相談が増えた
・会議での発言が活発になった
・部署間の協働がスムーズになった
こうしたサインは、行動の質が変化している証拠であり、定量化せずとも、組織の変化を可視化する助けになるでしょう。
両者を組み合わせた目標設定が重要
このように、定量目標が「成果のゴール」を示すのに対し、定性目標は「成果に至るプロセスと行動の質」を示す役割を担います。そして、両者を連動させることで、短期的な結果と中長期的な成長の両立が可能になるのです。
まとめ
定量的目標は、組織全体の方向性を明確化し、成果を可視化する強力なツールです。一方で、定性的目標は、その数値の背後にある行動や姿勢、価値観を支えるものであり、持続的な組織力強化に欠かせないものでもあります。
目標設定においては、どちらか一方に偏るのではなく、「定量で方向を示し、定性で行動の質を高める」という補完関係を意識することが重要です。
識学では、メンバーの成長支援や組織風土の改善を担う立場から、定性的な目標を適切に設計し、評価やフィードバックの中で定量的成果と結び付けていくことが望ましいと考えます。
数値に表れない努力や変化を正しく認識し、行動と成果を結ぶ仕組みを整えることで、真に生産性の高い組織をつくっていきましょう。
識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/











