最近よく聞く「フェムテック」という言葉をご存じだろうか? マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、フェムテックの意味や定義を知ろう。
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昨今、耳にする機会が増えてきた「フェムテック」という言葉。今後さらに注目されていくであろうジャンルですが、その意味や定義、また注目の理由をご存知でしょうか。なかには、以下のように感じている方もいるかもしれません。本記事では、上記の疑問にお答えできるよう、わかりやすくフェムテックについて解説しています。
フェムテック(FemTech)とは
フェムテックは「Female」と「Technology」を合わせた造語です。具体的には女性の健康問題の改善を目的に作られたソフトウェアや診断キットなどのツールを指します。
「フェムテック」という言葉は、2016年にイダ・ティン氏によって開発された月経周期予想アプリへの投資を募集する時に初めて使用されました。
フェムテックの具体例
日本国内でのフェムテックの具体例としては以下のものが挙げられます。
・月経管理アプリ「ルナルナ」
・卵巣年齢の検査キット「エフチェック」
・オンライン診療でピルを届けてくれる「スマルナ」
上記の中でも、特によく取り上げられるのが、株式会社エムティーアイが提供している「ルナルナ」です。ルナルナは月経管理アプリであり、多くの人に使用されているサービスの一つです。
なぜフェムテックが注目されているのか
フェムテックが大きな注目を浴びる理由はさまざまですが、主な理由としては以下の4つが挙げられます。それぞれの理由について、具体的に解説します。
ダイバーシティ強化のため
近年「働き方改革」を進める企業が増加傾向にある中で、ダイバーシティを強化することが課題として挙げられています。現代において女性は社会を支える一員であり、男性だけでなく女性にとっても働きやすい社会を実現する必要があります。
業界によっては男性の人数が圧倒的に多い企業も存在しており、女性への理解に乏しい会社もあります。男性管理職の人々が女性の健康に関する知識を取り入れ、理解を示す必要があります。
働く女性は43.5%と欧米並み
内閣府男女共同参画局によると、日本で働く女性は全体の43.5%であり、欧米と同程度の水準です。日本社会全体の43.5%が女性であるため、社会をより良いものに変えていくためには、女性への配慮が必要不可欠です。また、日本では女性の就業者数が増加傾向にありますが、管理職に就く割合は他国と比べると低い傾向があります。
参考:働く女性の活躍の現状と課題|内閣府男女共同参画局(https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html)
寿命が伸びることで市場は拡大する
現在、日本では、女性の平均寿命は87歳前後だといわれており、アメリカにおいても2060年には女性の平均寿命が日本と同じ水準まで達すると考えられています。
女性は高齢化するにつれ、骨粗しょう症や心臓病などのリスクが高まるだけでなく、アルツハイマーを抱える割合も高い傾向にあります。今後、中年期の女性の健康問題を最新技術を用いて解決することで、社会を良い方向に導く必要があります。
参考:急成長フェムテックの可能性|日本経済新聞(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC07CWF0X00C21A4000000/)
テクノロジーの進歩
テクノロジーの進歩もフェムテックが注目されている要因の1つです。近年では、農業や金融など、さまざまなものがテクノロジーと融合しており、私たちの生活に影響を与えています。したがって「健康問題」というビッグワードにテクノロジーが関わることは、当然のことです。
フェムテックを利用することで解決が期待される課題
フェムテックが多くの企業に利用されることで、以下の課題解決が期待されます。
月経による経済的社会的損失
月経による経済的社会的損失は、フェムテックにより解決できる課題の代表例です。月経に伴った体調不良の労働損失や医薬品などの経済的な負担は、7,000億円にまでのぼると考えられています。経済的な社会損失を回避するためには、フェムテックを早期で導入することが重要です。
女性が抱える問題の1つである月経による体調不良を社会の一人一人が理解することで、経済にも良い影響を与えることが期待できます。
ライフイベントによる退職
女性は、不妊治療や更年期障害によって、早期退職を余儀なくされることがあります。実際、不妊治療により、社会での活動に影響を受けた女性の割合は以下のようになっています。
・22.7%の女性が仕事と不妊治療の両立ができないため仕事を辞めている
・9.7%の女性が仕事と両立できずに不妊治療をやめている
社会で活躍する女性がライフイベントによって描いていたキャリアプランを断念することは、企業にとっては優秀な人材を手放すことでもあります。
参考:不妊治療と仕事の両立に関して|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197936.html)
管理職になりづらい
内閣府男女共同参画局の発表によると、日本の2021年のジェンダーギャップ指数は、156カ国中120位であり、他の国々と比べても低い水準です。日本では、外国人や女性の労働者があくまでも労働力・労働者としてしか認識されない実情が存在することが問題として挙げられます。
管理職に就くと仕事とプライベートの両立ができないため、女性が管理職に就きたがらないという現状を打破するためにも、管理職であっても家庭や子育てに時間を使うことができるような抜本的な改革が必要です。
参考:ジェンダー・ギャップ指数2021|内閣府男女共同参画局(https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/202105_05.html)
フェムテック事業に力を入れ始めた企業
フェムテックの広がりにより、専門的に開発を進める企業だけでなく、大企業も独自の路線で力を入れ始めています。
丸紅
丸紅はエネルギー事業や鉄鋼製品事業など、多くの分野で活躍している総合商社です。丸紅はフェムテック事業への参画を目指し、2020年には10名の女性だけでプロジェクトチームを発足しました。2021年の7月には、ルナルナを手がけるエムティーアイやカラダメディカと協力し、フェムテックプログラムの開発を宣言しています。本プログラムでは、医療機関と連携することで診察やオンライン診断を受けられるようにすることが目的です。
シャープ
シャープはテレビなどの家電を取り扱うメーカーとして、日本だけでなく世界で認知されている企業です。シャープのフェムテック事業では、IoT技術を取り入れた生理用品の収納ケースを開発。ケースを通して生理用品の残量を記録し、買い忘れや買いすぎを防ぐための仕組みを作ることに加え、生理周期などの把握も可能となっています。また、ここで収集したヘルスデータをもとに他のサービスの導入や医療機関との連携も視野にいれています。
フェムテックを福利厚生に導入している企業
フェムテックは事業としてだけでなく、福利厚生としても導入され始めています。フェムテックを福利厚生として導入している企業の代表例は以下の3つです。それぞれの企業がどのような福利厚生を導入しているのか、詳しく解説します。
小田急電鉄
小田急電鉄は、ダイバーシティの観点から、フェムテックの重要性を認識し、社内にさまざまなサービスを導入しています。2018年9月には不妊治療や流産相談窓口である「ファミワン」。2018年の12月には、オンライン医療相談「産婦人科オンライン」を導入しました。女性が少ない企業では女性社員が上司へ相談できないことが問題視されているなか、このような窓口設置は一つの打開策となるかもしれません。まずは小田急電鉄のように、気軽に相談できる状況作りに尽力しましょう。
ミクシィ
ミクシィは、小田急電鉄と同じように「ファミワン」を福利厚生として導入しています。ファミワンはLINEを活用した妊活コンシェルジュサービスであり、多くの夫婦が課題に感じている妊活や不妊治療への理解促進と支援を目的としています。早期にサービスを取り入れることで、優秀な人材の確保を目指し、ブランドイメージだけでなく利益向上にもつなげている企業です。
丸紅
丸紅は、2021年3月に、生理痛やPMSなどの症状に悩む女性社員を対象にした福利厚生制度の導入を発表しました。福利厚生制度の導入では、女性向け健康情報サービス「ルナルナ」とカラダメディカが提供するオンライン診療システムの活用を宣言しています。診療に必要な費用と、ピルの服薬が必要な場合は会社が費用を負担するなど、女性会社員の社会生活への負担を減らすために尽力している企業です。
フェムテックの注意点
フェムテックが世界中で注目されると同時に、科学的に根拠のない情報も拡散されるようになりました。特に子供がいる母親や妊娠中、妊娠を望む女性を対象に不安をあおることで、根拠のない情報でも信じ込ませられるからです。
例えば、「水道水の塩素は皮膚から体内に吸収されるため避けるべきだ」などといった科学的根拠が存在しない主張が該当します。インフルエンサーや芸能人からの情報でも、騙されずに真偽を確かめ、根拠のある情報を参考にしましょう。情報の選択が難しい場合は、適切な資格を有した専門家にすぐに相談することをおすすめします。
まとめ
フェムテックは世界中で注目されている言葉であり、これから成長する事業の1つです。これからの日本では、女性が抱える問題をデジタル技術などを用いて解決し、社会全体の利益につなげることが重要になります。自社の状況を見直し、フェムテックの導入や参画を検討してみましょう。
【この記事を書いた人】
小林カズシ/コンテンツディレクター 金融出身のコンテンツクリエイター。 三井住友銀行退職後、フリーランスとして活動。 現在は、電子書籍の執筆からクリエイティブ作成、ディレクター業務、ライティングまで幅広く行っている。 所持資格は簿記2級など。
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いかがだったでしょうか。フェムテックについて理解できたでしょうか。フェムテック導入や参画の参考の一助となれば幸いです。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/