サライ世代に役立つビジネスの極意を紹介する本連載。

上司である以上、誰もが部下から慕われる“良い”上司になりたいと思っているはずである。

だが、“良い”上司とはいったいなんだろう?

 マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」より、“良い”上司を考察してみよう。

* * *

“良い”上司になりたい上司たち

誰も、積極的に“悪い”上司になりたくはない。“良い”上司でありたい。

当然である。積極的に嫌われる理由は特に見当たらない。

では、“良い”上司とはどんな上司か。よく言われるのは次の様な上司ではないだろうか。

・部下からの相談に親身になって乗ってくれる“良い”上司
・部下の頑張っている姿をいつも見ていてくれる“良い”上司
・たまの無礼講を許してくれる“良い”上司

私自身も『部下からの相談に親身に乗ってくれる“良い”上司』をよく見てきた。管理職(男性)の下に、部下(女性)が「ちょっと相談良いですか・・・。」と相談にくる。30分ほど話し込んだ結果、「ありがとうございました!やっぱり○○さんに相談して良かったです!」と笑顔で帰っていく。

「喜んでたな。今日も良いことをした。やはり、“良い”上司であることは最高だ。」

『部下の頑張っている姿をいつも見ていてくれる“良い”上司』も良く聞く話だ。

深夜まで延長した会議を終えて自席に戻ると、部下が険しい顔でPCに向かっている。

「彼は確か昨日も遅くまで残っていたな。全社プロジェクトで忙しいタイミングだからな。」

「いつも、遅くまで頑張ってて偉いね。お先。」

「ありがとうございます!」

「喜んでたな。今日も良いことをした。やはり、“良い”上司であることは最高だ。」

極めつけは『たまの無礼講を許してくれる“良い”上司』だ。週末の居酒屋でこんな光景を見かけたことは無いだろうか。

「今日は無礼講だ。上司や部下といった関係は気にせず、一人の人間同士、楽しもう!」

そして、2時間ほど経過。ちょっと疲れ顔の上司に部下が「○○さん、ちょっとテンション低くないっすか?!もっと飲みましょうよー。」

「(今日は無礼講。無礼講。無礼講。・・・。)」という念仏とともに飲み干す。一瞬の笑顔の後、さらに疲れた表情に。

「喜んでたな。今日も良いことをした。やはり、“良い”上司であることは最高だ。」

皆、部下から気に入られたいのである。

“良い”上司かどうかを決めるのは誰なのか

一人の人間として、人から気に入られたい、存在意義を得たいというのは自然なことである。

私も部下から嫌われたくはない。どちらかと言うと好かれたい。

しかし、ここで一つ注意が必要である。

会社において、「“良い”上司かどうかを決めるのは誰なのか」ということだ。
それを理解するには、上司がなぜ上司であるか、上司を上司たらしめているものが何なのかを理解する必要がある。

上司はなぜ上司なのか。答えは、上司のポジションにいるから上司ということである。

つまり、上司は会社の中で、上司の上司から「君、ここの上司ね」と配置されたから上司なのである。この配置は、上司の上司が、「○○さんが上司のポジション(役割)に適任である」と考えた結果である。

逆に言うと、適任ではないと判断されれば、上司ではなくなってしまうのである。
そういうわけで、会社における“良い”上司かどうかを決めるのは、上司の上司ということである。

上司の上司にとっての“良い”上司とは?

それでは、上司の上司にとっての “良い”上司とはどういう存在か?

あなたが上司の上司だとしたら、どう考えるだろうか?

具体的な内容は皆、異なるだろうが、「上司の上司が責任を果たすために、有益な成果を上げてくれる存在」とまとめると異論は無いだろう。

当然、そこには「部下の頑張っている姿をいつも見ていてくれる“良い”上司」「たまの無礼講を許してくれる“良い”上司」という内容は入ってこないはずである。

上司の上司から求められる成果を上げられるのが“良い”上司なのである。

部下にとっての“良い”上司とは?

もう一つ、部下のポジションにいる方が不幸に陥らないために、部下にとって、本当の意味で“良い”上司とはどのような存在なのかも明らかにしておきたい。

冒頭に記した下記の様な上司は確かに“良い”上司かもしれない。

・ 部下からの相談に親身になって乗ってくれる“良い”上司
・ 部下の頑張っている姿をいつも見ていてくれる“良い”上司
・ たまの無礼講を許してくれる“良い”上司

そんな上司の下にいる部下は楽しく、ストレスなく働いているかもしれない。
今、楽しく、ストレスなく働いているかもしれない。

大学の同期が上司からのプレッシャーできつそうにしているのを横目に、「自分はなんて幸せな環境にいるんだ」と良い気分かもしれない。

その環境で、3年経ったとしよう。

楽しく、ストレスなく働いていた部下はどうなっただろうか。
相変わらず、楽しく、ストレスなく働いているかもしれない。

上司からのプレッシャーできつそうにしていた大学同期はどうなっただろうか。
上司から設定された目標をクリアし、成長し、課長やマネージャーになっているかもしれない。

上記は架空の話だが、イメージはつくのではないだろうか。
“良い”上司の下、楽しく、ストレスなく働いていた部下は全く成長しなかったのである。

一方、“厳しい”上司の下、プレッシャーできつそうにしていた大学の同期は大きく成長していったのである。

この差を生んだものは何なのか。
上司の違い、“良い”上司と “厳しい”上司である。

“良い”上司は、部下の相談という名の、言い訳承認会に親身になって付き合い、「難しいね」「それはしょうがないよね」「俺もそう思う」など、部下の言い訳を成立させるサポートを行い、「言い訳成立!上司もこの目標は無理だって。上司のお墨付き!未達でオッケー。」と考える部下を生み出していたのである。

また、深夜まで頑張っている姿や途中の工夫を褒めることで、「私の頑張っている姿や工夫を褒めてくれる=良い評価をしてくれる」と部下が考える様になる。部下が、いかに頑張っているか、工夫しているかという姿を良く見せるということに集中し始め、期初に約束したはずの目標は部下の意識の中でどんどんと希薄になっていったのである。

もう一点、たまの無礼講を許される飲み会では、何が起こっていたのだろうか。

上司と部下という上下関係を無視して良い=○○さんと自分は同位という錯覚を生じさせていたのである。「飲みの場と普段の仕事の場は違う。そんなことにはならない。」と思った方もいるかもしれない。しかし、絶対にそうならないと言い切れるだろうか。こういった一つ一つの積み重ねが錯覚をより強固なものにしていくため、注意が必要なのである。

ちなみに、上司と自分が同位と錯覚した部下は、“上”にいない上司の指示を聞く必要がないため、「それはちょっと難しいですね。」「他の人に頼んでもらえますか。」「ちょっと忙しいので。」「この目標は難しいので、ここまで下げてもらえますか。」など、今、部下自身が楽になる、ストレスを感じないようになるための発言をするようになる。上司からすると「何様のつもりだ。」と感じるかもしれないが、その原因は“良い”上司自身にあるのである。

一方で“厳しい”上司は何をしていたのだろうか。

“良い”上司の逆である。

・部下からの相談という名の言い訳承認会に付き合わない。
・最終的な結果に至るまでの頑張りや取り組み方を褒めない。
・無礼講を許さない。

この、“良い”上司と逆の取り組みはそれぞれ、どのような効果をもたらすのか。

・部下からの相談という名の言い訳承認会に付き合わない
→「言い訳は認められない・・・。結果に向かってやるしかない。」「でも、厳しい、嫌な上司だ。」

・最終的な結果に至るまでの頑張りや取り組み方を褒めない
→「いくら頑張っても、工夫しても、結果が良くなければ認めてもらえない。
結果に向かってやるしかない。」「でも、厳しい、嫌な上司だ。」

・無礼講を許さない
→「上司は“上”、自分は“下”。○○さんからの指示なので、やらなければならない。」
「でも、厳しい、嫌な上司だ。」

まとめ

まとめると、自らが上司の指示に従うべき存在であるということを正しく認識し、設定された目標に向かって、言い訳を考えることなく、集中して取り組む部下になっていたのである。

“厳しい”上司の下にいた大学の同期は成長し、そして「当時は厳しくて嫌な上司だと思っていたが、あの厳しさがあっての今だ。○○さんには本当に感謝している」という“良い”上司になるのである。

部下にとって本当の意味で“良い”上司とは、部下の今にとっては“厳しい”上司であり、嫌がられることもあるかもしれないが、未来になって、「実は“良い”上司だった。」と振り返られる存在なのである。

多くの上司が嫌がられることを恐れて、もしくは今、“良い”上司としての存在意義を獲得しようとして、誤った“良い”上司になってしまう。

上司とはどのような存在であるべきなのか。上司とは、上司の上司から求められている成果を出すことに集中し、その中で、部下に“厳しく”接することで部下を成長に導き、未来において感謝される存在であるべきなのである。

* * *

だれにも好かれる“良い”上司が真の“良い”上司ではない、ということもある。従来からの部下の育成には、パワハラなどに通じる悪い点もあったりもするが、真の“良い”上司とは部下から感謝されるべき存在である、といえよう。難しいことではあるが、上司である以上、真の“良い”上司を目指すべきであるし、それは自分自身の成長にも通じることなのではないだろうか。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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