上司にとって、人を動かす力は必要不可欠。それには「質問力」が必要だ。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、「質問力」で人を動かす力を知ろう。

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上司にこそ必要な「人を動かす質問力」 正しい問い方で人と組織を上手に動かそう

「報告をさせても、的を射た答えが返ってこない」
「言われたことをこなすだけで、自分で考えて動いてくれない」
「何を考えているのかわからない」

このようになる原因は「コミュニケーションが取れていない」ことなのですが、相手のせいにばかりしていても話は進みません。
自分に「聞き出す」力がないことが原因かもしれない、という可能性を考え、注意を払ってみると、新しいコミュニケーションやリーダーシップの形が見えてきます。

「世界一のメンター」が教える「人を動かす質問力」

アメリカでもっとも信頼されている「リーダーシップ論」の権威であり、毎年25,000人を指導する「世界一のメンター」、ジョン・C・マクスウェル氏の著書「人を動かす人の『質問力』」には、冒頭からこのように綴られています。

「人生では『投げかけた質問』の答えしか返ってこない」。

何も人生とまで言わずとも、日常生活でもよくある光景ではないでしょうか。

例えば、「Aがいいか、Bがいいか?」と質問すると、「A」か「B」のどちらかの答えしか返ってきません。
毎回このような問い方をしていると、それ以上に物事を考えなくなってしまいます。「C」というイマジネーションは生まれません。

マクスウェル氏はこう指摘します。

『底の浅い質問しかできない人』は『底の浅い答え』しか得られず、自信も欠如している。意思決定はお粗末で、優先順位も曖昧、未熟な対応しかできない。
一方、『深い質問』ができる人は、『奥深い答え』が得られ、人生に自信が持てる。賢い意思決定で最優先事項に集中でき、大人の対応ができる。
(引用:「人を動かす人の『質問力』」p23)

「聞き方」によってその人の実力や器量までもが試されるということですが、確かによくあることです。

この考え方を、職場で部下とのコミュニケーションに当てはめてみましょう。
こんな「底の浅い質問」を繰り返してはいないでしょうか。

「できたのか、できなかったのか?」
「わかったのか、わからないのか?」
「できるのか、できないのか?」

特定の問題、目の前の問題に対しての結果・結論だけを求めてしまうような質問では、何をするに当たっても「情報不足」になってしまいます。
結果、判断は短絡的なものになってしまいます。

目の前の問題の結論だけで、それ以上の情報は「要らない」と無意識に考えてしまっているとしたら、それは良いことではありません。

マクスウェル氏は「質問は『チャンスの扉』を開ける鍵」だといいます。そして、

リーダーは、常に自分の組織やチームのために、未来に目を向ける必要がある。(中略)優秀なリーダーとは、次々に質問を繰り返し、手当たり次第に誰彼の手を借りずにはいられない人のことである。(p24)

と述べています。

「できたのかできなかったのか」だけでなく「なぜできなかったのか」、「どうすればできるようになるか」、「わかったのかわからないのか」だけでなく「どこまでがわかったのか、どこがわからなかったのか」「どのようにすればわかるのか」までを考えて初めて有効な質問だということです。

相手が部下であれなんであれ、正しい判断を下すため、将来を見通すためには、情報を得るための「質問」が不可欠だというのです。

ポストマネジメントとリードマネジメント

近年、「ポストマネジメント」と「リードマネジメント」が話題になっています。
両者は相反するものであり、これからは「リードマネジメント」の時代である、とする論調です。

わかりやすく言えば、「ポストマネジメント」は地位や力を背景に、外的なコントロールで相手に行動を迫るものです。
しかし、部下の動機付けを目的としていながらも、その目標や出すべき結果を上司が決め、それを「やらせる」形です。

これに対して「リードマネジメント」は、一人一人の内部から動機を引き出そうとするマネジメントです。
その最大の特徴は、「他人の行動は変えられない、変えられるのは自分の行動のみである」という現実に依拠しているところです。

ポストマネジメントでは、外的な力によって「部下をコントロールしている」と思ってしまうかもしれません。
しかし実際に上司が願う部下像に近づくことはできているでしょうか。
また、「自分の思う通りにのみ動かす」ことを「コントロール」と捉えてしまう人もいます。

また、ポストマネジメントでは結局、上司から「与えられた」以上のことはしなくなってしまいます。
他人が勝手に決めたことに対して、要求以上の答えを出そうとモチベーションを抱くのは難しいことでしょう。

リードマネジメントの手法は、上司は「指示をする」のではなく「部下の達成するべき姿を上司が実践して見せる」つまり、模範を自分で示すというやり方です。

人にはもともと「仲間になりたい」「人の役に立ちたい」「喜ばれたい」といった気持ちがなんらかの形で存在しています。

この気持ちを刺激して行動に移させるのがリードマネジメントの目的です。
模範である上司を見て、どの部分が動機になるかは人それぞれですが、自分の内部に動機が生まれることが大切なのです。
そこからくる責任感や積極性はポストマネジメントとは大きく異なります。

そして「部下が自ら動く」マネジメントのためには、自分への問いも必要だとマクスウェル氏は力説しています。

成熟したリーダーになるための質問

マクスウェル氏は、リーダーの資質として多くの項目を挙げています。
その中でも、自分に問うべきことについて、いくつか具体的に紹介しています。

まず、リーダーたる自分の「人格」はきちんと練られているかを確認する質問として、

・締め切りに間に合わないことがよくあるか
・誓いを立てたり、決意を新たにしたり、変わろうと決心したりしても、すぐに元に戻ってしまうことが多いか
・自分の価値観に反することでも、相手が喜んでくれるなら、やってしまうか
・困難な状況から抜け出すためなら、真実を歪めたり、隠し事をしたりするか
・最前ではないとわかっていても、一番簡単な方法でやればいいと思うことがあるか
・人から全面的な信頼を得られないことがあるか

というものを挙げていて、「『はい』と答えた質問が一つでもあれば、あなたはもっと人格に磨きをかける必要がある」と指摘します。

また、「リーダーにとってもっとも重要な価値観は「奉仕する心」だといいます。

人はいろいろな理由からリーダーになる。権力が欲しい人、富が欲しい人、そして強い信念や「世の中を変えたい」という欲求に突き動かされる人も多い。
しかし、私はリーダーとして立つための「動機」として意義があるのは、一つだけだと考えている。それは「奉仕に徹する」ことである。
「人々の先頭に立つ気持ちはあるが、人のために何かする気はない」という人は、自分の動機を見直すべきだろう。人に奉仕することを厭わない人は、より良いリーダーになれるだけではなく、チームを助け、世の中を変えていくだろう。(p110-111)

そして、「与えること」を習慣にするための自分への問いとして、

・自分がこれまで受け取ってきたものは何か
・今、自分は何を持っているか
・(今すぐにでも)自分にできることは何か

これを探すよう勧めています。

この3つの問いは、部下の自主性を高めるためにも使えるかもしれません。

「聞く耳を持つ」前提を忘れずに

リードマネジメントの考え方にせよ、マクスウェル氏の指摘にせよ、「聞く耳を持つ」ことが大前提になっています。

相手に質問する時、どこかで「自分の聞きたい答え」を引き出そうとしている、ということはないでしょうか。
「自分にとって嫌な話は聞きたくない」という気持ちがそうさせてしまうのです。

このような空気があると、部下は「上司の期待通りの返事をしなければならない」と感じ、萎縮してしまいます。
返事をするのでいっぱいになってしまい、自分の意見を述べるチャンスを失ってしまうのです。
「思ったことを言いづらい」「わからないことを聞きづらい」原因の一つに、このような無意識の習慣があったとすれば、改める必要があります。

上司自身が「聞きたくないこと」もちゃんと聞かなければ、部下はおろか自分の成長も見込めません。
ましてや組織の成長は難しいでしょう。

ジャーナリストのシドニー・J・ハリスは、こう述べる。
「相手が私の言うことに反対して初めて、その人に関する重要な事実が明らかになる。『本当の姿」が暴露されるのは、対立が起きた場合だけである。独裁的な上司が『部下の本当の姿』になかなか気づかないのは、そのためである」(p72)

裸の王様、といった所かもしれません。

質問を通じて「現実」を知り、嫌だと感じることも受け止める。
質問によって部下を知り、内的動機を強いものにする。

より良い質問をできるようになることは次世代育成のためであるとマクスウェル氏は指摘します。
また何よりも、自分自身のより良い人生を質問によって引き出すことも重要でしょう。

そもそも、良い仕事人生を送れていない上司に、部下はついてきません。

【参照】
「人を動かす人の『質問力』」ジョン・C・マクスウェル著

* * *

いかがだっただろうか。「質問力」をつけることで、相手に対する理解、ひいては自分自身の理解をも深めることが可能になる、ということがおわかりいただけただろうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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