ステンレスを中心とした金属洋食器の製造で、国内シェア90%以上を占めるのが新潟県燕市だ。
もともと金属製品の中でも、銅器、キセル、ヤスリの製造が盛んだった。とりわけヤスリは、鋸(のこぎり)の目を立てる道具として作られ始め、「越後ヤスリ」として全国で名声を得た。しかし、いまはヤスリの製作所は市内に3軒しかない。
そのうちの1軒、柄沢(からさわ)ヤスリは昭和14年の創業だ。
10人規模の製作所で、職人が小さな機械と向き合い、精度を問われる工業用とともに踵(かかと)用と爪用のヤスリをひとつずつ作ってきた。
角質化した踵、切り終えた後の爪を削るヤスリは、研ぎ味がよすぎてもいけない。人の体に当たる優しさが必要で、繊細な目立て加減が求められる。
地金に、踵用には程よい細かさで1山2本、爪用には微細に1山3本の目が立てられる。わずか数ミリのズレでも性能が違うそうだ。
精緻な仕事を維持するのに、93歳の岡部キンさんの存在が大きい。
半世紀以上にわたって爪ヤスリを作ってきた岡部さんは、卓越した技術を後進に伝えつつ、若い職人も舌を巻く集中力で、今もヤスリを作り続けている。
商品名/岡部さんのヤスリ
メーカー名/柄沢ヤスリ
価 格(消費税8%込み)/爪ヤスリ=3,240円、踵ヤスリ=6,480円