取材・文/池田充枝
近年人気を集めている江戸時代の画家、伊藤若冲(1716-1800)は、京都錦小路の青物問屋の長男として生まれましたが、家業のかたわらに描いた独自の表現による絵を、大典禅師をはじめとする禅僧や支援者に高く評価されます。40歳で家業を弟に譲り、画業に専念する頃に葛藤があったことは想像に難くありません。
代表作である極彩色の「動植綵絵」のほかに、水墨画、版画の技法による作品など、85歳で亡くなるまで新しい技法や表現を探求し続けました。
若冲の秘蔵作品と、同時代の画家たちの優品を公開する展覧会が開催中です。(7月26日まで)
本展の見どころを、福田美術館の学芸課長、岡田秀之さんにうかがいました。
「今回の展覧会は昨年新たに確認された『蕪に双鶏図』の初公開に合わせて企画された展覧会です。この作品は、若冲30代、最初期の作品とされており、蕪畑のなかにいる番(つがい)の鶏を描いていますが、病葉や虫食い跡のある葉や雄鶏の姿など写生と想像が交じりあった不思議な形をしています。
また、若冲にしては珍しい、雲から上半身を出して牡丹を持つ阿弥陀を描いた『雲中阿弥陀如来像』や、その愛らしい姿に思わず微笑んでしまう、3匹の仔犬が描かれた『仔犬図』など、30代から80代までの作品約50点を展示します。(会期中展示替えがあります)
伊藤若冲「仔犬図」 福田美術館蔵
さらに、若冲と同時代の作家である池大雅(いけのたいが)や曽我蕭白(そがしょうはく)、円山応挙(まるやまおうきょ)、長沢芦雪(ながさわろせつ)の作品、京都在住のファッションデザイナー・串野正也(くしのまさや)さんが、若冲からインスピレーションを受けた作品も展示します」
約30点の作品が初公開!! 若冲ファン必見の展覧会にぜひ足をお運びください。
【開催要項】
若冲誕生~葛藤の向こうがわ~
会期:2020年5月23日(土)~7月26日(日)
会場:福田美術館
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
電話番号:075・863・0606
https://fukuda-art-museum.jp
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:火曜日
取材・文/池田充枝