2018年に総務省が発表した推計によると、女性の高齢者人口が初めて2000万人を超えたという(出典:総務省統計局ホームページ)。日本の女性の長寿傾向は加速しており「おばあちゃん大国」への道を邁進しているようだ。そうした背景などから、老後資金については男性よりも女性の方がシビアだと言われているが、実際のところはどうなのか? お金の教養を身につけるための総合マネースクールを運営するファイナンシャルアカデミーが、その実態を把握するため「女性の定年後」に関する意識調査を実施した。早速、調査結果を紹介しよう。
働く女性の9割「定年後が不安」理由は「年金など金銭面」「健康」
「定年後についてどのように思われますか?」という質問に対し、全体の約9割の人が「不安」と回答。その理由をたずねると「年金がもらえるかわからないなど金銭面的に不安があるから」といった声が最も多く挙がっていた。その他、「雇用延長の制度があっても健康の面で働き続けられるかわからない」という声もあり、不安な気持ちの裏側には複数の不安要素が存在していることがわかった。
働く女性の約8割が「定年後に必要な具体的金額を把握していない」
定年後の資金についてたずねたところ、「把握できている」と回答した人は全体のわずか2割にとどまった。前述の通り、大多数が「定年後が不安」と回答した理由として金銭面の不安が挙げられたが、その不安の原因のひとつとして「定年後にいくら必要なのか、具体的な金額を知らない」ということがあるようだ。
定年後「働きたい:働きたくない=50%:50%」
定年後の勤続意向についてたずねたところ「働きたい」「働きたくない」が、50:50という結果となった。「働きたい」と回答した人にその理由をたずねると「お金が足りない」「年金だけでは暮らしていけないから」といった声が上位に挙がり、逆に「働きたくない」という回答の理由としては主に「身体的にきつい」「老後はゆっくり暮らしたい」といった声が多かった。「働きたい」というよりは「本当は働きたくない、働けないかもしれないけれど働く必要がある」と考えている人が一定数存在するという実態が浮き彫りになった。
働く女性の約4割が「保有資産なし」
現在の保有資産について聞いたところ、「貯金」が最も多く全体の約4割となった。次いで「(資産を)持っていない」という人も約4割近く存在していることがわかった。この2つが圧倒的であり、その他の金融資産などを保有している人はいずれも約1割かそれ以下であるのが実情のようだ。
定年後の主な収入源トップ2は「給与」「公的年金」
また、定年後の収入源についてたずねたところ「本業による収入」「公的年金」がトップ2となった。「準備できていない」と回答した人は約3割、副業という収入源を持っている人はわずか1割だった。
50年以上前の日本を基準にした年金制度に頼らない定年後設計を
今回の調査では、「働く女性の3人に1人が保有資産なし」という、ある意味衝撃的な事実が明らかになった。また「定年後にいくら必要か知らない」という人も全体の約8割にのぼり、働く女性であっても、大半が定年後に対する知識不足と準備不足を課題として抱えているのが浮き彫りとなった。
現行の国民皆年金制度は、1961年に平均寿命が66歳だった頃の日本を基準に設計されたものであり、その制度に頼りっきりになるのは危険かもしれない。
既に定年後の収入源トップ2の確実性が揺らいでいる現在、老後の不安を払拭するためには、定年前のなるべく早い段階からの、他力本願ではない自らの計画的な蓄えが重要であるといえそうだ。
文/鳥居優美