文/鈴木拓也
和食は健康に良いというイメージがあるが、概して塩分が多めという側面がある。例えば、和食の調味料として使用頻度の高い醤油は、小さじ1杯で食塩含有量は1グラム。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、1日の食塩摂取量を5.0グラム未満に抑えるよう推奨されているから、気をつけないとすぐに塩分過多になってしまう。
実際の話、20歳以上の日本人の平均塩分摂取量は、1日あたり9グラム。WHOの基準よりも緩い厚労省の目標量(男性は8.0グラム、女性は7.0グラム未満)すらも超え、隠れた社会問題となっている。
塩分(ナトリウム)過多の食生活が問題なのは、高血圧になりやすく、そのせいで動脈硬化、心疾患、脳梗塞、腎不全といった病気のリスクが高まるため。日本人の死亡原因で上位に入る病気も含まれ、他人事ではない怖さがある。
そこで、日頃塩分の撮り過ぎを自覚する人におすすめなのが「減塩」。今回は、食事に含まれる塩分の効果的な減らし方を指南した新書『はじめての減塩』(幻冬舎)から、気軽に取り組める減塩法をピックアップする。
■塩は「つける」より「かける」
最近は、肉や天ぷらを「こだわりの塩」で食べさせる店が増えている。こうした塩は、精製塩に比べナトリウム以外のミネラルが含まれてはいるが、やはり摂り過ぎは禁物。
また、小皿に盛ってある塩に、箸でつまんだ食べ物をつけて食べると、ふれた所にべたっと塩がつき、思った以上に塩分を摂ることになる。
なので、本書がすすめるのは「つける」のではなく「かける」。塩を「指でつまんでパラパラと上からかける」と、ごく少量でもまんべんなく散らばって好ましい摂り方になる。
逆に醤油は、「かける」のではなく「つける」。上からかけると摂り過ぎになりやすいので、小皿に少量注いだ醤油に、「ちょんちょん」とつける感じで。
■味噌汁は1日1杯に
醤油と並んで、大きな塩分摂取源となりがちな、味噌汁。味噌汁1杯で2グラムの塩分を摂取することになり、3度の食事でみそ汁を摂る食生活は、塩分オーバーの元凶になる。
味噌自体に、血圧を下げる効果があることが最近の研究からわかっているが、本書では「1日1杯に」に抑えるのが得策だとしている。
■塩分ゼロの調味料を有効活用
塩分がはじめから含まれてない調味料は、減塩生活の強い味方ということで、大いにすすめられている。
これには、胡椒やカレー粉といったスパイス類、バジルやショウガなどのハーブ類、調味酢以外の酢などが挙げられている。
ラー油も塩分ゼロだそうで、餃子に使う際は、ラー油と酢を多めにして、醤油を少しだけ加えれば、減塩になる。
一方、スーパーでよく見かける「50%塩分カット」などを謳う減塩調味料は、結局ついつい使いすぎてしまいがちになるため、一度に使う分量に上限を決めておくべきだとも。
■糖質制限は減塩生活の敵?
流行の糖質制限食は、おかずを食べる量が増えがちになるという点で、減塩の視点からは少しリスキーだという。
近年悪者扱いされている米は、「塩分ゼロの優秀な食べ物」なので、塩分が気になっている人は、見直したほうがいいかもしれない。
一方、パンは意外と塩分が多いので注意。8枚切りの食パン1枚で、塩分は0.8グラムもある。これにバターを塗って、スライスチーズとロースハムを乗せると結構な塩分になってしまう。そして、うどん、そば、そうめんも、それ自体に塩が含まれており、同様に注意が必要だ。
お菓子については、アップルパイやチーズケーキのような洋菓子には塩分が多く、大福餅やみたらし団子といった和菓子は塩分が少ないことは、知っておいて損はないだろう。
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この種のハウツー本は、どうしても「あれもだめ、これもだめ」的な話になってしまうものだが、本書の基本的な考え方は、「帳尻合わせで塩分ダイエット」。例えば、昼にラーメン屋でどんぶり1杯のラーメンを完食すると、それだけで塩分は7グラムくらいになる。だから、ラーメンを一生食べるな、ではなく、朝食と夕食は塩分を減らすなどして、1~3日のスパンで帳尻を合わせる。
こんな風に、「おいしく食べる」楽しみを失わずに、少しずつ減塩を根付かせていくためのノウハウが本書に通底している。これから減塩にチャレンジしたい方には有用な1冊だ。
【今日の健康に良い1冊】
『はじめての減塩』
https://www.gentosha.co.jp/book/b12345.html
(濱裕宣・赤石定典共著、本体780円+税、幻冬舎)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。