文/鈴木拓也
「何もないところでつまずく」、「網棚に荷物を上げられない」、「瓶のふたが開けにくくなる」といった、今までの自分にはなかった身体の異変。これらは、たいてい加齢や運動不足に伴う筋力低下のサイン。
このまま放置すると、やがて膝・腰の痛みといった、無視できない症状へとつながり、身体はますます動きにくくなってしまう。痛みを抑えるために病院へ行くと薬が処方され、それで一時的には良くなっても、またぶり返すの悪循環となりがち。
こうした、筋力低下がおおもとの原因である不調を訴える患者に対して、薬の代わりに「体操」を処方するのは、Dr. KAKUKOスポーツクリニックの中村格子院長だ。中村院長の考案したこの体操は、日常生活が無理なくできるレベルを目指した「おくすり体操」と呼ばれるもの。「疲れずに立てる力」や「歩ける力」など、日々の暮らしに必要な「7つの力」を取り戻すことを主眼とし、それらを1冊にまとめたのが、著書の『カラダのおくすり体操』(ワニブックス)である。
本書の構成は、まず「7つの力」のうち、どの力が衰えているかをチェックする動作があり、それぞれの力について難易度レベル1~3の体操が、写真付きで解説されている。
例えば「転ばない力」。まず次の動作をやってみよう。
「転ばない力」チェックテスト
片足立ちをする(手は腰にあてても横に開いてもよい)。多少ぐらついても、そのまま1分間キープできたらOK。
1分間立ち続けられなかったら、「転ばない力」が衰えている証拠。このままだと、低い段差で転んで骨折し、最悪寝たきり状態につながるリスクは避けられない。
そこで、本書に掲載されているのが、「転ばない力」をつけるための体操だ。難易度の低いレベル1の体操は、以下のように行う。
1. 脚を肩幅程度に開いて背すじを伸ばして立ち、腕は体の横に下ろす。
2. 左足を軽く浮かせて、右足に体重をのせて5~10秒キープ。
3. 左足を戻して1に戻り、今度は右足を軽く浮かせて、左足に体重をのせて5~10秒キープ。この体重の左右移動を3回行う。
週2~3回これを続け、無理なくできるようになったら、レベル2、3へとステップアップしていく。
筋トレと違い、「おくすり体操」は、あまり運動してこなかった人や体力に自信のない人でも容易に始められるものばかり。それでいて、「一生現役で動き続けるため」に必要な力はしっかり身につくという。
日頃、力の落ち方が気になる方、医師から「運動しなさい」と注意された方は、本書の「おくすり体操」をやってみてはいかがだろうか。
【今日の健康に良い1冊】
『カラダのおくすり体操』
https://www.wani.co.jp/event.php?id=6215
(中村格子著、税込み1,404円、ワニブックス)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。