昔から煮物などで食されてきた高野豆腐。低カロリーかつ高タンパクなのでダイエットに向くことや、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防に役立つといわれるイソフラボンや鉄分といった栄養素を多く含むことから、健康食材として再び見直されてきています。
野菜などと一緒にじっくりと出汁で煮含めるのは、高野豆腐の定番の調理法。噛(か)みしめるごとに出汁がしみ出し、滋味深いおいしさです。しかし、近頃では伝統的な調理法にとらわれない、様々な食べ方が話題になっています。
興味深いのは、肉の代わりに高野豆腐を使う方法です。高野豆腐に醤油やにんにく、生姜などで下味をつけてから揚げれば、肉のような食べごたえのある一品に。細切りにしてチンジャオロースの肉の代用にしたり、小さく切って炒めて海老チリ風にしたりと、中華料理とは相性抜群です。
筆者も評判の調理法をいろいろ試してみました。おすすめは、豚バラ薄切り肉を巻いた照り焼きです。もどした高野豆腐を太めの拍子木切りにし、紫蘇(しそ)の葉と共に薄切り肉で巻いてフライパンで焼きます。あとは、醤油・みりん・酒を同量で合わせた照り焼きダレをからめるだけ。少量の肉でも満足感のある、絶品のおかずの完成です。
高野豆腐の起源については諸説あります。和歌山県の高野山で食事担当の年少の僧が、冬の寒い夜に豆腐を戸外に落とし、凍らせてしまったものを食べてみたらおいしかった――という節はよく知られています。また、遣唐使(けんとうし)であった弘法大師が、豆腐の作り方と一緒に高野豆腐の製法も日本に持ち帰ったという異説もあるようです。いずれにせよ、1000年以上たった今でも作り続けられている、先人の知恵から生まれた食材であることには間違いないでしょう。
文/大沼聡子