2028年大河ドラマ『ジョン万』で主演を務める山崎賢人さん。(C)NHK

ライターI(以下I):2028年の大河ドラマがジョン万次郎(中濱万次郎)を主人公とする『ジョン万』ということが発表されました。主演は山崎賢人さんで、大河ドラマ出演は初めてだそうです。

編集者A(以下A):制作発表会見では、ジョン万次郎の地元高知県の県紙『高知新聞』記者からの喜びの質問もありました。

I:高知といえば、坂本龍馬ばかりが目立ちますが、ジョン万次郎も幕末に大活躍した偉人です。

A:さて、大河ドラマは1963年の『花の生涯』から67作目になります。大河ドラマの長い歴史の中では1987年の『独眼竜政宗』から『武田信玄』『春日局』と3年続けて戦国時代を扱ったことがありました。生没年で比較すると伊達政宗(1567年~1636年)、武田信玄(1521年~1573年)、春日局(1579年~1643年)で、政宗と春日局がほぼ同時代ということになります。大河ドラマで同じ時期の物語が連続したのは、この頃のみになります。

I:なるほど。でも、2027年の『逆賊の幕臣』主人公の小栗上野介(演・松坂桃李)と2028年の『ジョン万』のジョン万次郎は文政10年(1827)の同年生まれなんですよね。同年生まれが続けて主人公になるのは、大河ドラマ史上初になりますね。ちなみに『逆賊の幕臣』放送年はちょうど、ふたりの生誕200年の年になります。

A:ジョン万次郎は14歳で乗船していた漁船が漂流し、アメリカ船に救助されて、アメリカに渡ります。アメリカ船のホイットフィールド船長に見出され、アメリカで暮らし、10年後に帰国するという流れになります。2025年の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の時代にも伊勢国白子から出航して遭難した船の船頭大黒屋光太夫がロシア船に救助されてロシアに渡り、皇帝に謁見するということがありました。外国船が日本の周辺に来航していた事情もあって、多くの漂流民が外国船に救助された時代のようですね。

I:ジョン万次郎は、天保12年1月5日(1841)に土佐から出航して遭難、伊豆諸島の無人島・鳥島まで流されたそうです。そこでサバイバル生活をしていたところ、たまたま立ち寄ったアメリカの捕鯨船に救助され、万次郎はアメリカに渡ったという流れになります。このころにはアメリカの船が日本の近海にやってきていたということですね。

A:『逆賊の幕臣』の小栗上野介との接点は、万延元年(1860)の幕府の遣米使節団の一行に小栗はポーハタン号、万次郎は咸臨丸と、乗船した船は異なりますが同じ使節団一行として旅をします。

I:ここが両作で描かれるのか、描かれないのか、とても楽しみですね。勝海舟もいますしね。

A:ということで、制作発表の会見の場で、制作統括の家冨未央さんに、2年連続で同時代の作品が続くことについて質問しました。「また同じ時代?」という声は局内であったと思われますが、どう乗り越えたのでしょう、ということにも答えてもらっています。

時代で切り取った場合、『ジョン万』は非常に『逆賊の幕臣』に近いところというか、同じような時代かなと思います。けれども、この企画は時代で切り取って始めたというよりも、ライフヒストリーに一番の魅力を感じて描いてみたいというところからスタートしましたので、持ち味として全く別の面白さをご提供できるのではないかということを企画の選定で打ち出しました。一番は冒険記であり、サバイバルとロマンの人間ドラマであるというところをお伝えしていきたいなとプレゼンして思いました。

時代が毎年毎年変わる面白さもあれば、『逆賊の幕臣』で描かれる時代というものを1年体感して、その知識や面白みを引き下げたまま次のドラマで、ああなるほど、視点を変えるとこういうドラマが、こういう物語があるのかという風に感じられるところも、いい意味であるのではないかなと思っています。万次郎さんはまさに、鎖国の時代に、自分の意図ではないですけれども、閉じた扉の外に流れてしまった庶民で、なかなか描かれることのなかったものだと思ってます。ただ、調べると本当に鎖国の時代に外に出てしまった漂流者や、近隣の外国に流れ着いた人たちというのは、描かれないだけで本当におびただしい数がいらっしゃいます。その方たちから見た人生っていうのは、また全然違う持ち味を持っていて、かつ、人知れず、そのまま民間外交員の役割を果たした人たちも数多くいらっしゃいます。その筆頭がやっぱり万次郎さんなのではないかなと思った時に、陸から陸の中で描く物語のみならず、海から見た陸という新しい視点で2年目をお届けできるのではないかっていうところで、企画を育ててまいりました。

A:家冨さんは、大河ドラマでは『平清盛』『八重の桜』『真田丸』『いだてん~東京オリムピック噺~』などに携わってこられた方ですが、その家冨さんのお話を聞いてハタと思ったことがあります。毎年のことなのですが、例えば2025年の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』放送中は、毎週山のようなネット記事が配信されました。ところが、最終回を終えると翌週からは『豊臣兄弟!』の記事配信にとって代わって、『べらぼう』の記事は潮が引くようにほとんどなくなってしまう――。

I:あ、それは私も思っていました。1年間大河ドラマを視聴して、色々調べたいな、もっと深掘りしたいなと思っても、関連する記事はなくなってしまうんですよね。この「満喫リポート」だってそうじゃないか、と言われれば、返す言葉もないのですが……。

A:ところが、2027年から2028年の2年間は、同じ1827年に生まれたふたりの物語が続くわけです。これは、新たな取り組みとして期待したいと思います。

I:おそらく両作に共通する世界観はないと思われます。同じ時代を描くといっても、異なる世界観の物語にすぐさま感情移入できるかいなか――。ジョン万次郎の冒険譚ともいえる『ジョン万』ですが、制作陣にとっても新機軸の大河ドラマが成功するかどうかの大冒険が始まるわけですね。

A:さて、どのような航海が待ち受けているのでしょうか。

※山崎賢人の「崎」は正しくは「たつさき」。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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