若い頃は、自分の目標や理想像を胸に、格言やことわざ、名言を「心のコンパス」のように携えていた人も多いのではないでしょうか? ところが、仕事・家庭・健康など、日々の優先順位に追われるうちに、気づけば「こんなはずじゃなかった」と思う瞬間もあります。

ただ、いまは人生を途中で描き直せる時代です。転職や学び直し、暮らしの整え直しも、珍しくありません。情報は検索やAIが助けてくれますが、「自分はどう生きたいか」だけは、自分の言葉で確かめる必要があります。そんな「芯」となる座右の銘を、改めて持ってみませんか。

今回の座右の銘にしたい言葉は「力戦奮闘」(りきせんふんとう) をご紹介します。

「力戦奮闘」の意味

「力戦奮闘」について、『精選版 日本国語大辞典』では、「力いっぱい努力して戦うこと」とあります。

「力戦」は、自分の能力や気力を余すところなく注ぎ込んで戦うこと。「奮闘」は、気力を奮い立たせて、困難な状況の中でも一生懸命に戦う、あるいは努力を重ねる様子を表しています。この二つの言葉が合わさることで、「ただ頑張る」というだけでなく、「全身全霊をかけて困難に立ち向かい、最後まで諦めずに努力し抜く」という、非常に力強く、情熱的な意味合いを持つようになります。

若い頃の「がむしゃらな努力」とは少し違い、酸いも甘いも噛み分けてきた世代がこの言葉を口にするからこそ、そこに深い説得力と静かなる決意が宿るのです。人生の後半戦、決して楽なことばかりではありません。しかし、だからこそ「自分の持てる力を尽くして前へ進もう」というこの言葉は、私たち自身の背中を力強く押してくれる最高のエールになります。

「力戦奮闘」の由来

「力戦奮闘」という四字熟語としての一つの明確な出典(古代中国の特定の書物など)があるわけではありません。「力戦」と「奮闘」という、古くから使われてきた二つの言葉が、より強い意味を持たせるために組み合わさって生まれた、日本独自の表現であると考えられています。

明治時代以降、近代化へと向かう激動の社会の中で、人々が自らを奮い立たせ、目の前の壁を乗り越えていくためのスローガンのように使われ始めたのでしょう。

大切なのは、この言葉が単なる根性論ではないということです。力を尽くすとは、やみくもに頑張ることではありません。自分の置かれた状況を見極め、できる限りの準備をし、必要な時には周囲の力も借りながら、最後まで投げ出さないことなのです。

「力戦奮闘」を座右の銘としてスピーチするなら

「力戦奮闘」をスピーチで使う場合、注意したいのは、聞き手に押しつけがましくならないことです。「皆さんも全力で頑張りましょう」と言うだけでは、少し重く聞こえることがあります。ですから、自分の経験に引き寄せて、「私自身、この言葉に支えられてきました」と語るのがよいでしょう。

以下に「力戦奮闘」を取り入れたスピーチの例をあげます。

これからの人生を歩むためのスピーチ例

私の座右の銘は「力戦奮闘」です。力の限り戦い、気力を奮い起こして努力する、という意味の四字熟語です。

若い頃は、この言葉を聞くと、ただ一生懸命に頑張ることだと思っていました。しかし年齢を重ねるにつれて、少し受け止め方が変わってきました。人生には、自分の力だけではどうにもならないこともあります。仕事のこと、家族のこと、健康のこと、人との別れ。思い通りにいかない場面は、誰にでも訪れます。

それでも、その時々で自分にできることを見つけ、気持ちを奮い立たせて一歩を踏み出す。その積み重ねこそが「力戦奮闘」なのだと、今は感じています。

私たちの世代は、もう若くはないと言われることもあります。けれども、これまで歩んできた年月があるからこそ、できることもあります。経験から判断できること、人の痛みに寄り添えること、あきらめずに続ける力。それらは、年齢を重ねたからこそ得られた財産です。

これからの人生も、平坦な道ばかりではないでしょう。けれども、困難を恐れすぎず、無理をしすぎず、それでも必要な時には力を尽くす。そんな思いを込めて、私は「力戦奮闘」という言葉を、これからも自分の座右の銘として大切にしていきたいと思います。

最後に

「力戦奮闘」という言葉には、ただ厳しいだけではない、人生を豊かに生き抜くための前向きなエネルギーが満ちています。人生後半には、若い頃とは違う課題が訪れます。けれども、それは「もう終わり」という意味ではありません。これまでの経験を生かしながら、自分にできることを尽くす。その姿勢を静かに支えてくれるのが「力戦奮闘」という言葉なのです。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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