山笑う頃、風薫る頃、鉄路沿いには心躍る風景が広がる。車窓から花景色を望み、花の名所を巡る。箱根登山列車×あじさいの時期は6月中順から7月。

異なる季節を行き来する登山鉄道 

平均時速は約13.4km。あじさいをかき分けるように電車はゆっくり進む。この速度なら車窓のシャッターチャンスを逃すこともない。写真は彫刻の森駅〜強羅駅の間。

新宿駅(東京)から小田急ロマンスカーに乗れば約1時間半で、箱根湯本駅(神奈川県)に到着。ここから終着の強羅駅までの8.9kmを約40分かけて結ぶのが、箱根登山電車だ。路線としては短いが向かうは“天下の険”。箱根湯本と強羅間の標高差は445mに及ぶ、全国有数の山岳鉄道である。

車窓にあじさいを映しながら、じわじわと高度を上げていく。

箱根湯本駅を出発すると、すぐに80パーミルの急勾配が待ち受ける。80パーミルとは、水平距離1000mに対して80mの高低差が生まれること。塔ノ沢駅(標高153m)〜宮ノ下駅(同436m)間は路線内でもっとも標高差が激しい区間で、勾配を上るために3か所に「スイッチバック」が設けられている。スイッチバックのたびに進行方向が変わるのは新鮮な体験だ。

山岳鉄道の醍醐味を味わう

あじさいの季節になると、編成は「あじさい電車」と呼ばれる。昭和初期から沿線に植えられてきたあじさいは、約7000株ともいわれ見事な群生を見せる。

鉄道写真家の中井さんは見どころをこう語る。

「山ばかりの車窓風景を豊かにしようということで、社員さんが植えたのが始まりといわれています。スイッチバックのある大平台駅の辺りが一番見応えがあります」

昼間の運転間隔は1時間に4本。スイッチバック駅の大平台などで電車の行き違いが行なわれる。スイッチバックのたびに車掌と運転士がホームを移動して入れ替わる様子も登山電車の見どころのひとつ。

標高差がある鉄道なので、あじさいの鑑賞期間が長いのも特徴だ。箱根湯本駅で6月中旬に満開となったあじさいは、標高の低いところから順に開花し、強羅駅では7月になっても見ごろが続く。

スイッチバックとあじさいの景観を堪能できる箱根登山電車は、乗車するだけで楽しい。山岳鉄道の醍醐味を味わっていただきたい。

旅の美味「炙り金目鯛と小鯵押寿司」弁当

駅弁は明治21年(1888)創業の老舗、『東華軒』の「炙り金目鯛と小鯵押寿司」(1580円)がおすすめ。酢締めの金目鯛と小鰺のふたつの味が楽しめる。小田原駅、箱根湯本駅などで販売。
●東華軒 神奈川県小田原市栄町1-2-1小田原駅東口 電話:0465・47・1186
営業時間:8時30分〜18時45分(東口売店)定休日:無休
交通:JR東海道線、JR東海道新幹線、小田急電鉄、伊豆箱根鉄道乗り入れ

案内人/中井精也(なかい・せいや)さん(鉄道写真家)

鉄道車両のみならず、鉄道にかかわるすべてのものを独自の視点で撮影。現地に吹く心地よい風が伝わってくるような「ゆる鉄」というジャンルを確立。著書に『ゆる鉄絶景100 中井精也写真集』など多数。

取材・文/宇野正樹 写真/中井精也

 

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