
1994年生まれ、東京都出身。3歳で子役として活動を始め、14歳で「仮面ライダーキバ」に準レギュラーとして出演。ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズン(2010~2014年)で主演回数歴代最多を記録。その他、「弱虫ペダル」「HUNTER×HUNTER」「呪術廻戦0」など、多くの舞台作品でメインキャストを務める。その他、「高嶺のハナさん」シリーズ、「BLドラマの主演になりました」などのドラマ、『わたしの幸せな結婚』『札束と温泉』『帰ってきたあぶない刑事』などの映画に出演。
文/浅見祥子
ミュージカル『テニスの王子様』などの2.5次元舞台、漫画やアニメを原作にした多くの作品に出演してきた俳優の小越勇輝さん。4月から鈴木保奈美さん、足立梨花さんらと共演する舞台『汗が目に入っただけ』に出演します。ある日突然亡くなった母親の幽霊と、残された家族による悲喜こもごもを描く異色のお葬式コメディ。次男役として登場する小越さんに今回の舞台についてお聞きしながら、まだ舞台観劇をあまり経験したことのない方に向けて、演者から見た舞台の楽しみ方をご指南いただきました。
「どんな舞台になるのか、ドキドキしています」
ある日ぽっくりと亡くなり、成仏できない母親(鈴木保奈美)。理由は、残された家族が自分の葬儀を巡って揉めていること。長女(足立梨花)はキリスト教式、長男(西野創人)は仏教式をそれぞれに主張。そこに、仕事がトラブル続きでそれどころではない次男(小越勇輝)、空気の読めない別れた夫(田中要次)がしゃしゃり出て、葬儀社の担当(蘭寿とむ)は霊が見えると言い出す。刻一刻と、通夜の時間が迫る――。ワンシチュエーションの群像コメディを得意とするアガリスクエンターテイメントを主宰、「人事の人見」などの地上波連ドラのメインライターも務める冨坂友による作・演出の舞台『汗が目に入っただけ』が上演されます。

――今回の舞台には「エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)」というサブタイトルがあるのですが、これは一体…? 初めて耳にします。
「先日初稽古があったのですが、僕らも“これって、どういうことですか?”から始まりました(笑)。舞台が、途中から変調するようです。急に審判たちが出てきて、え、何が始まった!? ってなるような。それは『汗が目に入っただけ』という主軸に置かれたコメディとは別軸となっていて、その役を演じる役者の消費カロリーが舞台上に表示され、その数字を競うスポーツのような感じです。僕は“小越勇輝”という名の、でも自分とは別人でもある、演劇をするスポーツマンを演じる……そのあたりは、“こういう感じで”と僕もさわりを説明されただけなんですけど」
――別軸は、バラエティ番組のような感覚でしょうか? ある意味、二役とも言えそうですね。アドリブの要素もあるでしょうが、舞台経験が豊富だとそこは、任せて! という感じですか?
「いや、任せて! という感じではないです(笑)。アドリブって難しいですが、稽古をしていくなかで役がなじんでいくと自然と誰かのアドリブにのったり、仕掛けていったりしやすくはなります。それで冨坂友さんの作品ですからテンポがあり、ドタバタとしていて掛け合いが楽しいものになるはずです。そうした面白さがありながら、登場するキャラクターは成長し、最後にはちょっと感動的なところがある。主軸のストーリーだけでも成立しますが、それが入る面白さもあって。きっと笑えると思います」

――冨坂さんが脚本を手掛けた舞台『SHINE SHOW!』(2023年)にも出演され、それに続くオファーですね。
「また声を掛けていただけたことが、まずはとても嬉しかったです。しかも冨坂さんの実話がベースで、僕の演じる次男はご自身をモデルにしているらしくて。それで特別なプレッシャーを感じるわけではありませんが、冨坂さんの思い出やご家族の話を大切にしながら、物語にどう落とし込んで面白くできるかだなと。じつはまだ脚本が完成していないので(取材当時)、どうなるのかドキドキしています……」
――バラエティ豊かで強力なキャストが揃いましたが、皆さんとは初共演とか?
「でも僕はあまり人に対して緊張しないんです。リスペクトする気持ちはもちろんあるのですが、地位やキャリアに臆するということがなくて。顔合わせや舞台挨拶、稽古というシチュエーションには毎日毎日緊張するんですけど」
――次男役を演じる上で、どんなことを意識しますか?
「次男の“自由人”というイメージを大事にしたくて。それでいて彼には本当にやりたいこと、それへの思いがないわけではないだろうと。先日の稽古で家族との関係性を話し合う時間があり、そこから見えてきたものもありました。長女と長男がバチバチとやり合うなか、狙っているのか、または空気が読めないのか? 周りとの関係性のなかで考えたりして、自分の立ち位置を探っています。基本的には周りの空気感ややりとりのなかで役柄をつくる、なじませていくという感じです」
――そもそも、コメディは好きですか?
「面白いことが出来る人間ではないので、本当は得意ではないのかも……。でも急にくだらないダジャレを言いたくなって、周りが反応できずにしーんとなったりします(笑)。わりとふざけた人間、というかふざけることも好きです。コメディは間合いやセリフの言い方が難しいし、ここが面白いですよ! とわかりやすく提示しても面白くない。稽古場でいろいろ試したりしてつくりがいがあります。テーブル稽古のある現場が初めてなのですが、“他のキャストの方が“そういう風に感じていたんだ”とか“そういうつくり方を!?”などと知ることができて面白いです。時間のかかる作業かもしれませんが、みんなで共有できて、すごくいい時間だなと」
――では今の段階で作品に向かう気持ちを教えて下さい。
「演劇の面白さをたくさんの方に伝えたい、毎回そう思います。そのために作品と向き合い、自分なりの何かを残せたら。舞台でしか表現できないものをお届けできたらいいなと思っています」
“緊張は成長痛”、緊張しなくなったら終わり

――舞台をまだあまり観たことがない人に、その魅力を伝えるとしたらどんな言葉になりますか?
「舞台でしか感じられないものはたくさんあると思っています。劇場へ足を運ぶことも、劇場という空間そのものを感じることも、それが作品の空間になっていくということ。ひとつの演目を多くの人と同じ気持ちで観て、のめり込んでいくこと。その“のめり込む空気感”というものは、舞台を観たことのない人はあまり感じたことがないんじゃないかと思います。ライブなどにも近いかもしれませんが、それともまた違うんですよね。ドラマや映画でも、もちろん感動したりさまざまな感情が生まれるでしょうが、舞台の場合は、それが目の前で生で行われる。その熱量や、ダイレクトに伝わってくるもの、そこがやっぱり舞台のよさだと思っています。『人って生きている!』そんなことが届けやすく、届きやすいのかなと」
――舞台を好きになるかどうかは、最初に観る作品が大事という気もしますが?
「確かにそうかもしれません。食べものと同じで、最初に自分にあわない、おいしくない…と思ってしまったら、苦手と決めつけてしまうかも。“なんの話だったの?”と思うような難解な作品も、演劇好きなら自分で咀嚼して解釈していくかもしれませんが、“なんだこれ?”とそこで演劇から遠ざかってしまう可能性もありますよね。そういう意味でも、今回のような作品は見やすいものになると思います(笑)。親子でも、友達同士で観てもいいですし。それからミュージカル作品も見やすいですよね。“急に歌い出すのはなぜ”と思う人もいるから、好みによるかもしれませんけど」
――観客としては、カーテンコールにも舞台ならではの楽しさがあって。作品に自分も参加したような気になります。
「劇場空間というのは不思議で。いくら稽古をしてもある域を超えないものが、劇場という空間、そこに来てくださったお客様がいて初めて完成するという感覚があります。よりエネルギーを使うし、空間が広いせいなのか、知らないうちに自分から出るエネルギーが増していたりします。表現の仕方がちょっと変わることも。特にコメディはそうかもしれませんが、地方によって笑いの起きるところが違ったりして、やっぱり生ものだなって」
――ドラマや映画などの映像作品との違いをどこに感じますか?
「良くも悪くも、役や作品に向き合える時間が長いことです。一か月ほどの稽古期間があり、そこから公演があって。稽古では挑戦も失敗もできる、その時間が大事です。辛かったりもしますが、お芝居って楽しいなって。それは役としても俳優としても、生きている! と思える時間ですね」

――「年に1本は舞台をやりたい」とおっしゃっていますが、そういう意味で?
「そうした時間を味わいたいし、やっぱり演劇の面白さを届けたい。これはずっと言っていることですが、自分に才能があるとは思っていないんですよ。それでもなぜ続けられるかというと、もちろん周りのおかげもありますが、向き合えているからだと思います。辛くてもう向いてない……と思っても、そこに一生懸命になれるところが自分の強さでもある。それを改めて感じさせてくれるから、ひとつのことに進んでいける時間というのが好きなのかもしれません」
――ふつう、自分の限界を知ることは恐ろしいことで。俳優さんは舞台で稽古を経て本番を繰り返し、自分の限界を思い知らされ、それを突破しようとし続けるわけですよね?
「さっき“稽古でも毎日緊張する”と言いましたが、緊張しなくなったら終わりだと思っています。いつだったか“緊張は成長痛”と聞いたとき、すごくいい言葉だなって。それならまだ自分も成長できる、もっと頑張ろう! と思いました。それで30代になってできること、興味を持つことが増えて。以前なら“できないかもしれない”と思ったことも、“手が届くかも”と思えるようになりました。だからここからの人生がより楽しみです。40代、50代、60代、70代とどんな自分になっていくかは想像できませんが、そのときどきで楽しみを見つけていくはず。死ぬまで挑戦し続けたい――。そんなことを思っています」
エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)
『汗が目に入っただけ』
脚本・演出/冨坂 友(アガリスクエンターテイメント)
出演/鈴木保奈美、足立梨花、小越勇輝、西野創人(コロコロチキチキペッパーズ)、蘭寿とむ、田中要次 ほか
東京公演/2026年4月3日(金)~4月19日(日) IMM THEATER ほか広島・大阪・富山・山形公演あり
https://www.asegameni.jp/
取材・文/浅見祥子 撮影/黒石あみ
浅見祥子(映画ライター)
雑誌「BE-PAL」(小学館)、「田舎暮らしの本」(宝島社)、web「大人のおしゃれ手帖」(宝島社)、「シネマトゥデイ」などで映画レビュー、俳優&監督インタビューを執筆。また「芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら」などの書籍ほか、赤楚衛二「A」、菅田将暉「着服史」、小関裕太「Y」、藤原大祐「FeaT.」、菅井友香「たびすがい」(すべてワニブックス)などでインタビューを担当。











