「自然が織りなす色は何より美しい」「かつては一色に十年と思ったが、この頃は一色一生と思っている」――染織家で随筆家の志村ふくみの言葉です。
志村は31歳のとき、母の小野豊の指導で植物染料と紬糸による織物を始め、66歳で紬織の重要無形文化財保持者(人間国宝)となりました。
そして昨年秋、101歳を迎えた現在も、自然や色彩への深いまなざしを持ち続けています。
細見美術館で開催の特別展「志村ふくみ 百一寿 -夢の浮橋-」では、最新作《夢の浮橋》と《朧月夜》を初公開します。(3月3日~5月31日)
本展の見どころを、ゲストキュレーターの外山もえこさんにうかがいました。
「本展では、人間国宝・志村ふくみが植物の命から汲み出した「色」の世界を、三つのテーマで構成された展示室を通してご紹介いたします。
第1室は「源氏物語」の世界です。
志村ふくみは、70代半ばから源氏物語を主題にした連作を手がけました。本展のために制作された新作《朧月夜》《夢の浮橋》が初公開されます。

絹糸/紅花、茜、紫根、藍、刈安 ◎通期展示
五十四帖の終幕を飾る《夢の浮橋》では、光源氏の運命を彩った女性たちが象徴する「紫」を紫根(しこん)で、姫君たち情熱を表す緋色を、紅と茜(あかね)のぼかしで表現しました。藤や葡萄を思わせる絣模様は、御簾(みす)や几帳の奥に隠された姫君たちの魂を荘厳するかのような静謐な美しさを湛えています。

絹糸・金糸/紫根、藍、刈安、臭木 ◎通期展示
第2室は、作家・石牟礼道子と志村ふくみが、次世代への遺言として託した新作能『沖宮(おきのみや)』の世界です。
前期には、関西初公開となる新作2点が展示されます。このうち物語の象徴である少女・あやがまとう舞衣《紅扇》は、生命のみなもと「沖宮」を象徴する緋色の衣裳です。二人が「あやにふさわしい」と共鳴し選んだ、紅花で染めた緋色に注目してください。天草四郎の衣裳、小袖《Francesco》も、見どころの一つです。

絹糸/紅花、藍、刈安、臭木、紫根 ◎前期展示

絹糸/臭木、藍 ◎前期展示
最終室では、志村ふくみが長年大切にしてきた残り布や端切れを用いた、コラージュ作品を特集します。

高村光太郎の詩に寄せた《五月のウナ電》は、人類以外の生物への、そして人類自身への緊急の警告を志村ふくみ自ら書と小裂(こぎれ)で描いたものです。
植物から授かった色が、言葉と響き合い、物語へと結実する。志村ふくみが紡いできた「祈り」の軌跡を、ぜひ会場で受け止めていただければ幸いです」
草木染の奥深い色味が紡ぎ出す伝統衣装の美しさを目の当たりにできる展覧会です。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
特別展 志村ふくみ 百一寿 ―夢の浮橋-
会期:2026年3月3日(火)~5月31日(日) ※前・後期で展示替えあり
前期3月3日(火)~4月12日(日) 後期4月14日(火)~5月31日(日)
会場:細見美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
電話:075・752・5555(代)
公式サイト:https://www.emuseum.or.jp
開館時間:10時~17時
休館日:月曜日(ただし5月4日は開館)、5月7日(木)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝











