文/鈴木拓也

画像はイメージです。

ベンジャミン・フランクリンは、「この世で確実なものは、死と税金だけだ」という言葉を遺している。

現代に生きる我々も、死からも税からも逃れられない。特に税は、一生の付き合いとなり、ライフステージによって関わる中身も変わってくる。

それが顕著となるのが50代。親の介護、実家の処分、贈与や相続など、これまで経験してこなかったお金のやりとりが発生してくる。どれも少々複雑な仕組みや制度があり、税もまたややこしい。しかし、これを面倒くさがると思わぬ損をしかねない。

幸いにも、この世代の税をわかりやすく説いたガイドブックが登場した。書名は、『人生100年時代 50歳からの「くらしと税」』(日経BP  https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/25/12/03/02351/)。著者は、日経新聞電子版で「くらしと税」を担当する記者の嘉悦健太さん。新聞記者らしい明快な解説で注目の1冊となっている。

今回は、その一部を紹介しよう。

実家を解体したら税負担は増加する!?

実家を相続したものの、いずれは自分がそこに住む可能性は乏しく、空き家のまま放置という人は少なくない。放置したところで、固定資産税はかかるし、地域によっては都市計画税もプラスされる。さて、どうしたものか……?

解体して更地にしてしまうのも一つの手かもしれない。そうすれば、定期的に帰省して維持修繕する手間も費用も省ける。

その落とし穴は、税負担が増えることだ。制度上、家が立っていれば、固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1に軽減される。言い換えるなら、更地にした途端に、それぞれ6倍、3倍に跳ね上がる。それ以前の問題として、解体費用もかかる点は、心しておかねばならない。

更地にした土地を国が引き取る「相続土地国庫帰属制度」が最近できたが、一定の負担金は発生するなど、条件は厳しめ。

もう1つの策は、空き家を第三者に売却することだ。この場合、首尾よく売れたとして、今度は譲渡所得に税金がかかってくる。その算出には、家の購入にかかった取得費を明らかにする必要がある。売買契約書が見つからずで、金額が不明な場合、譲渡価額の5%をみなし取得費として算出する。しかしこれだと、譲渡所得税が結構な金額になる恐れが出てくる。本書では、ほかの書類・データ(エビデンス)から推定した近似値を出すという、別の道が記されている。嘉悦さんは、帰省を機に取得費のエビデンスを探すことをすすめている。

退職金にもかかる税

50代は、定年退職がリアルに意識され始める年代だ。退職金をもらい悠々自適を夢見るにせよ、再雇用で極力長く働くにせよ、税と無縁ではいられない。

退職金にも税はかかるが、退職所得控除という非課税枠がある。控除額は、一か所に長く勤めているほど増加し、新卒で入社して60歳まで勤め続ければ2060万円まで非課税となる。

退職時に一括で支給されるのではなく、企業年金として支給されるかたちを取る人もいるだろう。この場合は雑所得と区分され、公的年金等控除という非課税枠がある。ただし、ほかの公的年金と合算するため、「枠は超えやすい」ので注意が必要だ。

いったん退職して再雇用される場合も、税が関わってくる。嘱託だと給与所得なので、税の面では正社員の頃とさほど変わらない。

もしこれが、業務委託契約であれば事情は変わってくる。個人事業主という扱いとなり、確定申告をする必要が出てくる。

定年後はボランティア活動を頑張りたいと考えているなら、これも税がからむことがある。もし、金銭・物品の対価を受け取ったら課税対象になる。これは雑所得という扱いで、それが年間20万円を超えたら確定申告が必要となる。

介護費用は控除に注目

自身の定年退職とは別に、現実味を帯びてくるのが親の介護だ。在宅介護にするか、老人ホームに入居するか、いずれの場合も税を視野に入れる必要がある。この場合、注目するのは主に控除となる。

例えば、在宅介護するとなってバリアフリー改修をした場合、その費用は税額控除の対象になる。さらに、リフォーム資金のローンを組んだら、別途控除の対象になる。このとき注意したいのは、自宅が自身の所有する物件であるかどうか。親名義の実家を、子が支援した分は対象外となるだけでなく、支援分が贈与税の対象にもなりうる。

訪問介護といった居宅サービスは、医療費控除の対象になる。ただし、家事の援助については基本的には対象外で、訪問入浴介護などとの合わせ技で控除対象となりうる。

では、特別養護老人ホームに入居すると、どうなるか?

この場合、月々発生する費用のうち、施設サービス費については介護保険の対象となり、自己負担の上限額は決まっている。そして、自己負担分については、他の費目と合算した額の一律2分の1が、医療費控除の対象にもなる。

くわえて、健康状態によっては障害者控除の対象になることも。障害者と認定されたら27万円の所得控除がある。年金収入のみであれば、一定の条件下で非課税世帯扱いとなり、高額介護サービス費の上限額も大幅に下がる。

* * *

最初からここまで読まれたあなたは、「50歳からの税とはなんと面倒なものなのか」と思ったかもしれないが、その感情は自然なものだ。嘉悦さんも、「分かりにくいのは間違いありません」と冒頭で書いている。いきなりすべてを把握しようと頑張るのではなく、「自分が選べる範囲を知り、制度を上手に活かす」のがポイント。そのために本書は、またとない手引きとなるはずである。

【今日の暮らしに役立つ1冊】
『人生100年時代 50歳からの「くらしと税」』

嘉悦健太著
定価1870円
日経BP

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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