
決して、人生「順風満帆」とは行かぬものです。若い頃と違って、壮年期を過ぎてからの不幸な出来事や災難は、精神的にも大きなダメージとなります。そんな時でも、顔を上げ、前に進まなければならないのが人生ではないでしょうか?
何気ない友人や知人が掛けてくれた言葉が、深く傷を負った心を癒し、勇気づけてくれる場合もあります。また、先人が残した言葉を紐解けば、幾つもの教訓や悟りが残されており光明となることもあります。
そんな言葉の一つとなることを願い、今回の座右の銘にしたい言葉は「大同団結」(だいどうだんけつ)をお届けします。
「大同団結」の意味
「大同団結」について、『デジタル⼤辞泉』(小学館)では、「複数の党派や団体が、ある目的のために、主張などの少しの違いは問題としないで力を合わせること」とあります。「大同」は「大きな共通点」「大きな目標の一致」を、「団結」は「まとまって結びつくこと」を表します。つまり、細かい相違点には目をつぶり、より重要な共通の目的に向かって力を合わせる姿勢を指しているのです。
現代社会では、価値観の多様化が進み、世代間の考え方の違いも顕著になっています。しかし、だからこそ「大同団結」の精神が求められているともいえるでしょう。家族、地域、組織……どんな場面でも、完全に意見が一致することは稀です。
それでも、共通の目標に向かって手を取り合う。そこに「大同団結」の真価があります。
「大同団結」の由来
時は明治20年(1887)前後。当時の日本は、国会開設に向けて自由民権運動が盛り上がっていた時期です。しかし、民権派の内部では意見の対立が絶えず、政府に対抗する力が分散していました。そこで立ち上がったのが、星亨(ほしとおる)や、後藤象二郎らです。彼らは「大同団結運動」を提唱しました。
「小さな党派の争い(小異)は捨てて、国会開設と条約改正という大きな目的(大同)のために団結しよう」
この呼びかけは多くの人々の心を動かし、一時は大きなうねりとなりました。これが「大同団結」という言葉の始まりであり、現代でも「組織を一つにする」際の合言葉として使われ続けています。
歴史を振り返ると、この言葉には「個を殺して集団に従う」という全体主義的な意味ではなく、「個々の志を尊重しつつ、より高みを目指すための戦略的な握手」というニュアンスが含まれていることがわかります。

「大同団結」を座右の銘としてスピーチするなら
「大同団結」を座右の銘としてスピーチする際、この言葉には「小異を捨てる」という側面があることを理解しておく必要があります。決して他者の意見を軽視するという意味ではなく、優先順位をつけて判断する知恵を表しているのです。
スピーチでは、この微妙なニュアンスを丁寧に伝えることが大切です。以下に「大同団結」を取り入れたスピーチの例をあげます。
共通の目標に向かって団結する重要性を説くスピーチ例
私の座右の銘は「大同団結」です。この言葉を選んだのは、長年の社会人経験を通じて、完璧な意見の一致などありえないと学んだからです。
若い頃は、細かな点まで自分の考えを通そうとしていました。しかし歳を重ねるにつれ、本当に大切なのは何かを見極める力が必要だと気づきました。家族との話し合いでも、地域の活動でも、100パーセント同じ考えの人など存在しません。それでも、子どもたちの未来のため、住みよい街づくりのため、という大きな目標では一致できる。そこに力を注ぐべきだと考えるようになったのです。
特に印象深いのは、定年後に参加した地域の防災活動でのことです。年齢も職業も異なる人々が集まり、当然のことながら防災対策の方法について様々な意見が出ました。議論は時に白熱し、なかなかまとまりませんでした。
しかし、ある方が「私たちの目的は何でしたか。この地域の命を守ることですよね」と言われた時、全員がハッとしました。手段の違いにこだわるより、命を守るという目的に向かって協力することの方がはるかに重要だと。まさに大同団結の精神です。
人生百年時代と言われる今、私たちシニア世代には、若い世代に橋渡しをする役割があると感じています。異なる価値観を尊重しながらも、より大きな視点で物事を捉え、共通の目標に向かって力を合わせる。この「大同団結」の精神を、これからも大切にしていきたいと思っています。
最後に
この言葉は、単なるスローガンではなく、多様な価値観が交錯する現代において、他者と共存するための「大人の知恵」と言えるかもしれません。自分と違う意見の人を排除するのではなく、「まあ、向いている方向は大体同じだ」と笑って肩を組む。そんな度量の広さを持つ人が一人でも増えれば、家庭も、地域も、そして日本も、もっと温かい場所になるに違いありませんね。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











