
決して、人生「順風満帆」とは行かぬものです。若い頃と違って、壮年期を過ぎてからの不幸な出来事や災難は、精神的にも大きなダメージとなります。そんな時でも、顔を上げ、前に進まなければならないのが人生ではないでしょうか? 何気ない友人や知人が掛けてくれた言葉が、深く傷を負った心を癒し、勇気づけてくれる場合もございます。
また、先人が残した言葉を紐解けば、幾つもの教訓や悟りが残されており、光明となることもあります。そんな言葉の一つとなることを願い、第45回の座右の銘にしたい言葉は「勇猛果敢(ゆうもうかかん)」を紹介します。
目次
「勇猛果敢」の意味
「勇猛果敢」の由来
「勇猛果敢」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「勇猛果敢」の意味
「勇猛果敢(ゆうもうかかん)」について、『大修館 四字熟語辞典』(大修館書店)では、「勇ましく強く、思い切りがよいこと」とあります。「勇猛」は勇ましく強いこと、「果敢」は決断力があって大胆なことを意味します。この二つの言葉が組み合わさり、より力強く、前向きな意味合いを持つ言葉となっています。
「勇猛果敢」の由来
「勇猛果敢」は、中国の歴史書『漢書』「翟方進伝」(てきほうしんでん)に由来します。前漢の成帝の時、丞相(じょうしょう)の翟方進は、成帝の妻の父である紅陽侯(こうようこう)とその一派を批判します。
「皆內有不仁之性、而外有俊材、過絕人倫、勇猛果敢、處事不疑、所居皆尚殘賊酷虐。」
いずれの者も内面には不徳の性を有し、外面にはすぐれた才能を有しているが、人の道を大きく外し、勇猛果敢で、そのことに対して疑いを持たず、人の道にはずれた乱暴や、むごいことを平気でする、という意味です。
今ではポジティブな意味合いで使われ、誉め言葉にもなる「勇猛果敢」ですが、由来となった故事では、ネガティブな意味合いで使われていたようです。
歴史を紐解いてみれば、数々の偉人たちが「勇猛果敢」な精神で時代を切り開いてきました。織田信長、坂本龍馬、マザー・テレサなど、困難な状況に立ち向かい、偉業を成し遂げた人々の姿は、私たちに勇気を与えてくれます。彼らの人生は決して平坦な道ではありませんでした。様々な困難、苦境に直面しながらも、決して諦めず、強い意志と勇気で道を切り開いていったのです。
人生経験豊富なサライ世代の皆様にとって、これからの人生は未知の領域への挑戦となるかもしれません。健康不安、社会との繋がり、趣味や生きがいなど、様々な課題に直面する中で、勇気を持って前進していくことが重要です。
「勇猛果敢」を座右の銘としてスピーチするなら
「勇猛果敢」は、時として「無謀」や「向こう見ず」といったネガティブなイメージに捉えられてしまう可能性があります。そのため、スピーチでは、単に「勇猛果敢」であることが重要なのではなく、どのような状況で、どのように「勇猛果敢」さを発揮していくのかを具体的に説明することが重要です。
また、謙虚さを忘れずに話すことも大切です。自分の実績や能力を誇示するのではなく、「勇猛果敢」な精神で目標に挑戦していく姿勢を伝えるように心がけましょう。以下に「勇猛果敢」を取り入れたスピーチの例をあげます。

新しいことに挑戦する勇気を与えるスピーチ例
私の座右の銘は「勇猛果敢」です。この言葉と出会ったのは、60歳で起業を決意した時でした。
長年のサラリーマン生活で培った経験を活かし、新しいビジネスに挑戦しようと考えていた矢先、ある本でこの言葉に出会いました。「勇猛果敢」とは、ただ闇雲に突き進むことではありません。十分な準備と覚悟を持って、決断すべき時には躊躇せず前に進む。その姿勢を表す言葉です。
私は、この言葉を道標として、慎重に計画を立て、決断の時には迷わず行動に移してきました。その結果、今では多くの若手起業家の支援もできるようになりました。
人生100年時代と言われる今、年齢に関係なく新しいことに挑戦する勇気が必要です。この「勇猛果敢」という言葉が、皆様の新たな一歩を後押しする力となれば幸いです。
最後に
「勇猛果敢」という言葉。それは単なる勇ましい言葉ではありません。人生100年時代を生き抜くための、力強い羅針盤となる言葉です。小さな勇気を積み重ね、目標を設定し、失敗を恐れず挑戦していく。そうすることで、私たちは「勇猛果敢」に人生を切り開き、より豊かで充実した日々を送ることができるでしょう。人生の後半戦を、より輝かせるために、「勇猛果敢」をあなたの座右の銘にしてみませんか?
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
