未来の不安よりも、今を精一杯幸せにする

幸子さんはがんの病院とは別に心療内科にも通い、カウンセリングと投薬を継続して行い、徐々に気持ちを前向きに変えることができたという。

「がんの薬を飲んでいる時期だったので、抗不安薬で飲めない薬もありました。主治医と相談しながら治療を進め、パニック症状は徐々に落ち着いてきました。

治療と並行して、実際に親を亡くされている方に話を聞くようにもなりました。知り合いから、ピアサポートとして活動する団体があることを教えてもらったのです。そこで気づいたのは、『今できる最善のことは、両親と自分のために、楽しい思い出を一緒に作ること』でした」

幸子さんは今年の4月でがんの投薬治療で最も副作用が強かった薬の2年間の服用を終えた。まだまだ治療は続くものの、日常生活に支障をきたすほどの副反応は落ち着いたという。その後、幸子さんは1つの決断をした。

「実家の近くに引っ越しをしたんです。一緒に出掛けたり、何かあったときにすぐに側に寄り添えるように。一緒に生きている今を大切にすると、親がいなくなった後もその楽しかった思い出と共に生きていくことができるからです。

この前、久しぶりに両親と3人で旅行に行きました。私は自撮りも全然しないのですが、景色だけじゃなく、3人での写真を撮りました。3人とも写真にはリアルな老いが写ってしまったので、アプリで加工しまくりました(笑)」

幸子さんは、自身の病気と「親より長く生きる」という目標を結びつけてしまった。そのため、親との別れを想像したときの喪失感が、より一層強いものになったのだろう。

親との別れに悲しみが伴うのは、大切に育てられた証でもある。だからこそ、今両親が一緒にいてくれる時間に感謝することが、一番大切なのではないだろうか。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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