カタカナ語だからある程度は海外の人にも通じると思いきや、実はまったく伝わらない表現も少なくありません。そのひとつが「ペットボトル」。日本では日常的に使われている言葉ですが、「ペット」って、どういう意味でしょう?
今回ご紹介するのは 「ペットボトル」の英語です。

目次
「ペットボトル」の英語表現は?
“bottle”という言葉
感情の瓶づめ?
“Ica yolmiquiztli” という考え方
最後に
「ペットボトル」の英語表現は?
日本語でおなじみの「ペットボトル」という言葉は、実は英語圏ではほとんど通じません。英語で“pet”(ペット)と聞くと、多くの人は「飼い猫」や「犬」などの動物を思い浮かべると思います。
英語の「ペットボトル」は、 “plastic bottle”(プラスチックボトル)です。日本語の「ペットボトル」は、素材である「ポリエチレンテレフタレート“Polyethylene Terephthalate”」の頭文字“PET”に由来する独自の略語が、カタカナ化して定着したもの。英語圏では、単に “plastic” でくくられることが多いです。
たとえば、
“Can I have a plastic bottle of water, please?”
(ペットボトルの水を一本いただけますか?)
“Don’t forget to recycle your plastic bottles!”
(使い終わったペットボトルはリサイクルするのを忘れずにね!)
などと使います。
“bottle”という言葉
「ボトル“bottle”」という言葉は、日本語にも馴染みのある外来語ですが、英語では、さまざまな意味や表現に使われています。基本的には瓶や容器を指しますが、実はそれだけではありません。
哺乳瓶を指したり、「酒」や「飲酒癖」という意味で使われることもあります。
ここでは、日常的に使われる表現を3つご紹介します。
1. bring your own bottle (BYOB)
パーティーの際に「飲み物は各自で持参してください」という意味で使われる表現です。また、レストランなどでは「お客さんが自分でお酒を持ち込む」という意味でも使われます。
【例文】
“It’s a BYOB barbecue, so bring something you like!”
(飲み物持参のバーベキューだから、好きなものを持ってきてね!)
2. hit the bottle
酒に溺れる、飲酒に逃げる
【例文】
“ After the breakup, he really hit the bottle.”
(別れたあと、彼は本当に酒に溺れてしまった。)
3. bottleneck
(交通や仕事などの)ボトルネック、滞り・障害となる部分
【例文】
“The shortage of engineers is the biggest bottleneck.”
(技術者の不足が一番のネックです。)
などと使われます。

感情の瓶づめ?
ほかにも、英語には “bottle up” という表現があります。これは、感情を内に押し込め、外に出さずに抱え込むという意味があります。
たとえば
“He bottled up his anger for years until he finally exploded.”
(彼は何年も怒りを抑え続け、ついに爆発してしまった。)
“It’s not healthy to bottle up your emotions for too long.”
(気持ちを長い間押し込めておくのは、カラダに良くないよ。)
などのように使うことができます。
“Ica yolmiquiztli” という考え方
こうした表現は、英語に限らず、世界の多くの言語にも存在しているようです。
メキシコ出身の友人に、スペイン語にも似た表現があるか尋ねてみたところ、言い回しをいくつか教えてくれました。
“Tragarse las palabras”:言葉を飲み込む。特に、怒りやためらいを伴う場面で使われます。
“Guardárselo”:胸にしまっておく。心の奥に留めておくようなニュアンス。
“No decir ni pío”:“pío”はひよこの鳴き声を表すスペイン語の擬音語。「ぴよとも言わない」、つまりまったく口を開かないことを意味します。
アステカ文明について研究している彼は、さらにナワトル語(アステカの支配民族・メシカ人が話していた言語)についても話してくれました。この言語にも、「言葉を飲み込む、感情を抑える」ことに近い概念があります。
それが、“Ica yolmiquiztli”という表現です。
“Ica yolmiquiztli”
(命の源によって、沈黙のうちに死ぬ)
「自分が本当に望んでいることを表現する活力を失っている状態。それは他人に対してだけでなく、自分自身に対しても同じことが言える。」
“Ica” =( ~によって)“by means of”
“Yollotl” = (私たちに命や力を与えるもの)“gives us life, energy, purpose”
“Miquitztli” = (死)“death”
この言葉には、「心の命“Yollotl”が表現を失い、内に閉じ込められて死んでゆく」という深い哲学が込められているのだと、彼は語ってくれました。それはアステカの人々にとって、生命の核であり、すべての中心でもある思想だといいます。

最後に
世界には多くの言語があり、それぞれの中に、感情を抑えたり、言葉にならない思いを表す表現があります。
ナワトル語の“Ica yolmiquiztli” に込められた思想、「自分が本当に望んでいることを表現する力を失っている」という感覚は、 現代を生きる私たちにも深く響いてくるように思います。
たとえ誰かに直接言いたいことを伝えることができなくても、自分の中にある気持ちを見つめ、認めていくことは、「自分が本当に望むこと」に近づくのかもしれません。
次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
