取材・文/ふじのあやこ
昭和、平成、令和と時代が移り変わるのと同様に、家族のかたちも大家族から核家族へと変化してきている。本連載では、親との家族関係を経て、自分が家族を持つようになって感じたことや、親について、そして夫や妻、子どもについて思うことを語ってもらい、今の家族のかたちに迫る。
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株式会社オーネットは、全国の既婚男女を対象に「結婚までの交際期間に関する実態調査」(実施日:2024年10月17日~10月19日、有効回答数:25歳~34歳の既婚男女615人(男性301人・女性314人)、インターネット調査)を実施。アンケートでは、「配偶者とどれくらいの交際期間を経て結婚しましたか?」の問いに対し、「1~3年未満」との回答が最も多く(全体の41.5%(男性43.2%、女性39.8%))、次いで「6か月~1年未満」(全体の21.1%)という結果に。長い交際期間だったと回答したのは、「6~10年未満」が全体の7.6%、「10年以上」が全体の2.8%となっていた。
今回お話を伺った希美さん(仮名・44歳)は、30歳のときに4年間付き合っていた男性にプロポーズをするも、提案されたのは結婚ではなく同棲。同棲することになり、相手が今まで避けられていた希美さんの両親への挨拶が行われることになった。【~その1~はこちら】
夫は中学生のときから一人暮らしのような状態だった
同棲に向けて、希美さんの両親と当時彼氏だった夫をついに会わすことができた。その場では母親のアシストもあり、相手から「結婚前提」という言葉を引き出せたという。
「母親は『結婚じゃなくこの年齢から同棲?』と私が相手に対して思っていたことを代弁してくれました。そしたら、『もちろん、結婚前提です』と言ってくれたんです。私はその言葉を聞いて、前向きに同棲の準備をすることができました」
同棲するにあたり、色々な決め事を作ろうとした希美さんだったが、相手からの提案がなく、何も決まらなかったという。相手はその理由として「誰とも一緒に暮らしたことがないから」と言った。そこで相手の親との関係を深く知ることになる。
「相手は実家の敷地内にある離れという場所で、中学生の頃から暮らしていました。親との関係が悪く、そこで暮らせと親から強制されたと。離れには水道は通っていたけれど手洗い場のようなものだけで、トイレやお風呂はなかった。中学の頃は親が暮らす母屋のものを使っていたものの、高校生の頃には顔を合わせたくなくてトイレは公園や駅、コンビニを利用していたそうです。食料などの生活費は、決まった額が入った封筒が、離れに一番近い母屋の窓に挟まっていて、そこから銭湯のお金やコインランドリーのお金も捻出していたと言います。
話を聞いて、なんて言葉をかけたらいいのかわかりませんでした。私が想像する親子関係とはかけ離れすぎていて……」
初めての共同生活での戸惑いを相手から感じることはあったものの、大きな揉め事には発展することなく、相手の家庭事情を聞いても、希美さんの結婚したいという気持ちは消えなかった。しかし、結婚についての話し合いをする中で、別れることを考えさせられた発言があったという。
「『子どもは欲しくない。親になりたくない』と言われました。自分の何が悪かったのかもわからないまま離れで暮らすことを強いられたことで、『親は異世界にいるようなわかり合えない生き物』だと。『その生き物に自分がなることが想像もできない』と言われ、別れるかどうかの選択を私に委ねてきました」
【「結婚は2人でも楽しいと思える相手としてほしい」次ページに続きます】