日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)
米飯を食べるのと砂糖をなめるのは同じ
血糖値は糖質を摂ると上がる
みなさんが健康診断を受けるとき、たいてい「朝食は食べずに来てください」と言われるはずです。その主な理由は、血液検査の数値に影響が出ないようにするため。とくに、血糖値は食事をすると上がってしまうので、朝食抜きの状態で「空腹時血糖値」を計測するわけです。
ただ、厳密には「食事をすると血糖値が上がる」のではなく、「糖質を摂ると血糖値が上がる」というのが正解です。そして、糖質とは甘い物だけでなく、炭水化物も同様だということを繰り返し述べておきます。
血糖値は、健康診断ではもっぱら糖尿病の診断に使われますが、慢性疲労やほかの怖い病気にも関わってくる重要な数値です。ここでは、糖質を摂ることでみなさんの血糖値がどう変化するのかについて説明しましょう。
それにはまず、改めて「糖質」について理解を深めてもらう必要があります。
おそらくみなさんは、「三大栄養素」という言葉を聞いたことがあるでしょう。栄養学における極めて基本的な用語で、糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質の3つを指します。
この三大栄養素のうち、血糖値を上げるのは糖質だけで、タンパク質も脂質も血糖値を上げません。というのも、血糖値とは血液中のブドウ糖濃度のことであり、ブドウ糖は糖質からしかつくられないからです。
糖質には、その構造によって、単糖類、二糖類、多糖類などの種類があります。ざっくり言うと、ブドウ糖は単糖類で、砂糖は二糖類、米飯など炭水化物は多糖類です。
砂糖の二糖類は、ブドウ糖が2つ連なった分子構造をしています。米飯やパン、麺類などの炭水化物は多糖類で、ブドウ糖がたくさん連なっています。
ただ、いずれも口に入れて咀嚼し、胃で消化される過程で連なりがほどけ、すべて1つずつのブドウ糖に分解されます(図1参照)。
つまり、米飯を食べるのと砂糖をなめるのは結果的に同じことです。
こうして分解されたブドウ糖は、小腸から血液中に吸収されます。血液中にブドウ糖が吸収されれば、血糖値が上がるわけです。
ただし、私たちの体はうまくできていて、血糖値が上がりすぎないような仕組みが備わっています。
血液中にブドウ糖がたくさんあることを察知すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、余ったブドウ糖を処理してくれるのです。
このとき、血液中にブドウ糖がたくさん存在すれば、それを処理するためのインスリンもたくさん分泌されます。
すると、今度は血糖値が下がりすぎてしまい、数々の不快症状が出て、慢性疲労へと繫がるわけです。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。