文/印南敦史

健康診断の結果を聞いたときなどに医師から、「血糖値が高いので、下げましょう」などとアドバイスを受け、ショックを受けた経験のある方も少なくはないだろう。

そのため危機感を抱き、「このままではまずい」とばかりに慣れない運動を始めてみたり、ご飯やラーメン、パスタなどを我慢しているというケースも大いに考えられる。

ところが残念なことに、そういった努力は長続きしないことが多いものでもある。いうまでもなく、運動も食事制限も楽ではないからだ。しかも我慢に我慢を重ねてがんばり続けたところで、期待していたほど血糖値が下がるわけでもなかったりするのだから困りもの。

だが、そもそも努力の方向性が違っているのだと断言するのは、『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(矢野宏行 著、アスコム)の著者。

「ミスター血糖値」と呼ばれ、寝ても覚めても血糖値のことを考え続けている“血糖値オタク”だと自身も認める糖尿病専門医である。

血糖値を下げるための対策の第一歩は、正しい知識を身につけること。そして、効率よく血糖値を下げる方法をまじめに実践すること。そのことをしっかり肝に銘じ、きちんと対策に取り組めば、ひとりでに血糖値は下がっていくというのだ。

なお著者によれば、このことに関連して無視できない重要なキーワードは「血糖ブースター」なのだそうだ。血糖ブースターをオンにすると、血糖値の上昇を促してしまうということである。

 人間の体は、ブドウ糖(グルコース)を分解して、生きるために必要なエネルギーを作っています。食事をするとブドウ糖は「血糖」という形で血液中に蓄えられます。
 血液中の血糖は、増えすぎると筋肉や脂肪などにも蓄えられるようになり、その量が多いと、いわゆる肥満になります。
 血糖はつねにエネルギーを作るために消費されるので、血液中の血糖は時間がたつとなくなります。血液中に血糖がなくなったときに、筋肉や脂肪から血糖が取り出されます。
 これを「糖新生」といいます。(本書「はじめに」より)

血糖ブースターのスイッチがオンになっていると糖新生が起き、血液中が血糖だらけになってしまう。つまり、血糖値が高くなる「高血糖」の状態だ。その状態が続くとやがて糖尿病になるわけだが、それを避けるため、そしてちょうどいい血糖値をキープするために、血糖ブースターのスイッチをきちんとオフにする必要があるのだ。

ところが、多くの方が得策だと信じている習慣のなかには、逆に血糖ブースターをオンにしてしまう可能性もあるものも少なくないという。だとすれば、リスクの多い「NG生活習慣」を知っておきたいところである。

そこで本書のなかから、ここでは「野菜ジュース」に関する意外な真実を抜き出してみることにしよう。

「野菜は体にいいから、健康のためには積極的に摂取したほうがいい」という認識を持っている方も多いはずだ。しかし、それを真っ向から否定するつもりはないものの、全肯定することもできないと著者はいうのだ。

なぜなら、「野菜を体に摂り入れるのなら、なんでもかんでもOK」というわけにはいかないから。いいかえれば、野菜の種類も、そして摂取の仕方も重要だということである。

とくに注意したいと指摘されているのは、市販の野菜ジュース。健康のためにと毎朝飲んでいるという方もいらっしゃるだろうし、そうでなくとも「これ1本で一日の半分の野菜の栄養素がとれる」などの謳い文句を目にすれば、つい心を動かされてしまうかもしれない。ところが、野菜ジュースには大きな落とし穴があるようなのだ。

もちろん、砂糖不使用なら問題はない。ところが、たいていの野菜ジュースは飲みやすくするために加糖したり、果物を混ぜたりしている。そのため、それが不要な糖質摂取につながってしまうのだ。

200mlほどの小さいパックの野菜ジュースには、だいたい15gから20gの糖質が含まれています。角砂糖にすると、4つか5つ分です。それを一気に体に流し込むわけですから、言わずもがな血糖値は上がります。(本書164ページより)

つまり、マイナスに転じるほどの負のパワーを持った糖質を過剰摂取していることになるのである。そのため、野菜の栄養素を摂るつもりで飲んでいたとしても、野菜の持つプラス面をすべて消し去ってしまうと考えられるわけだ。

* * *

これは一例にすぎないが、いずれにしても血糖値を上昇させないためには、きちんとした知識を蓄えておく必要があるのだ。前述したように血糖ブースターをオフにすれば、血糖値はひとりでに下がっていくというのだから。

しかも個人差はあるものの、早い人であれば1週間もすれば目に見えるほどの変化が現れるようなので、本書を参考にしながら生活習慣を改善していきたいものである。

『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』
矢野宏行 著
1540円
アスコム

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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